バートランド・ラッセル「歴史教育」
* 原著:hat is Democracy? 1953* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収
国民を好戦的でなく平和的に導びくのは主として学校の役割であり、歴史を、自国とか他国とかの特定事項について強調力説するよりも、人間文化の進歩の歴史として教えるべきである。
世界中、例外なくどの国も悪いことをやって来たが、それは大部分馬鹿げた過ちであった。過ちを二度と繰り返さぬよう子供に教えねばならない。(どの国も自国の過ちをあまり子供達に教えないようにしがちであるが)自国の子供には隠せても、相手の国はそれを忘れていないので、国際社会で恥をかき、自国民を欺くことになる。集団がヒステリックに興奮すると、どんな風に国全体を愚行に追い込むか、また、波及する気狂い状態に押し流されずに平和のために毅然たる態度をとる少数の人々をなぜ迫害までするか、などを子供達に教えるべきである。
自国の子供達に、外国の子供達の日常生活の喜怒哀楽の姿を映画で観せる必要がある。隣国を仮想敵国視する民族国家がもし上映を許可する気になれば、ユネスコ(国連)が映写してくれ、好戦的心情は大幅に減るだろう。(右上イラスト出典:B. Russell's The Good Citizen's Alphabet, 1953)