バートランド・ラッセル「感情に訴える宣伝」
* 原著:Source: Education and the Social Order, chap.15* 出典:『ラッセル思想辞典』
ローマ・カトリック教会に対する感情は、幼少の頃、夜半のミサや受難日の荘重な儀式、復活祭の喜びの中で、闇と香と神秘に包まれて感得した感情に結びついている。この種の感情が、ある政治集団に溶けこむと、一種の知的な確信をムザムザと踏みにじる感情に変る。この型の宣伝を旧教教会(カトリック)は一番よく知っている。約二千年の間、その宣伝技術を磨いて来たからである。
教会ほど完全でないが、似たことを国家は軍歌、軍隊行進、国旗掲揚礼式という形で実用化している。幼い頃、赤い服の英国軍隊の行進に狂喜した生々しい記憶が私にもある。これが消えない限り、軍国主義崇拝は必ず作り出されよう。
感情に訴える宣伝には諸種の危険性が伴う。悪い動機にも使われ、合理的に議論する心をなくす危険性もまたある。平穏な時には国際協調派の人も、戦争や死に直面すると、愛国者や
(松下注:挿絵は、ラッセルの The Good Citizen's Alphabet. Gaberbocchus, 1953 より)。