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バートランド・ラッセル「聖職者の職業悪」

牧野力(著)『ラッセル思想辞典』所収

Source: Principles of Social Reconstruction, 1916, chap.7.

 聖職者なる職業人は二つの理由から自ら苦しむ。
 第一は、一般人よりも有徳の人間であると因襲的な俗衆に買いかぶられていること、第二は、聖職者たる職業人が害を生む源泉は教会への寄進寄付と財産制度であることである
。確立されたこの制度は、聖職者の精進と判断力とを曲げやすく、その制度が社会的考慮と権力をふるう機会と結びついて、教会の倫理的な力を弱めるからである。
 宗教は、社会生活では政治より影響力が大きく、宗教人に汚点のないことの必要さは政治家の場合以上である。宗教は、フレンド教会のように、週日(平日)は一般の職業人として働き生計を立て、宗教活動は無報酬の熱意から行う人々で営まれねばならない俗衆の世界に生きる人々(=宗教的熱情の持ち主)は、寄進で暮して特定の信条に拘束される聖職者よりも道徳的であり、宗教的偏見も少なく、真の意味で物事を考え、活動する。
 宗教的生活は職業的僧侶階層から解放されない限り、生きたものにはなれないし、真の宗教精神を支えられない。
(挿絵の出典:The Good Citizen's Alphabet, 1953.)
The evils we have been considering seem inseparable from the existence of a professional priesthood. If religion is not to be harmful in a world of rapid change, it must, like the Society of Friends, be carried on by men who have other occupations during the week, who do their religious work from enthusiasm, without receiving any payment.