ラッセル「米国国防総省)と大企業」

R.カスリルズ、B.フェインベルグ(編著),日高一輝(訳)(→ 松下訳に変更)『拝啓バートランド・ラッセル様_市民との往復書簡集』

目次



・・・。米国において国防のために費やされるお金は、たいへんな額に上ります。大軍需企業は議会工作のために退役軍人を雇い入れ、非常に強力な議会工作(ロビー活動)や効率的な宣伝活動を行います。これは、軍縮のための大きな妨げとなります。・・・。きわめて多くの人々が世界の現状に関心をもっております――けれども、普通の人は、事態を変えさせるだけの力が自分にあるかどうかを考慮するとき、無力感にみたされてしまうのです・・・。'


ラッセルからの返事(1962年5月13日)

 拝復

ラッセル英単語・熟語1500
 あなたからのとても興味深いお手紙、うれしく拝読しました。わたしは、米国における国防費と防衛の役割との間の関係を暴露したために、多大の苦難を味わわされたことを指摘しなければなりません。わたしは、産軍複合体を非難してきました。そうして最近のいくつかの論文で、産軍複合体の難しい問題に専念してきました。
 わたしが最近書いた若干の文献を同封します。その中に「原子科学者会報」(Bulletin of the Atomic Scientists 原子力科学者会報)に寄稿した論文も入っています。その論文では、アメリカのペンタゴン(米国国防総省)と、それからそれと結託している実業家たちの危険性について、その概略を述べてあります。
 人々が無力感を感じているとあなたが述べている点に関していえば、それはわたしが1945年以来、この国(英国)で論じつづけてきた点でもあります。まったくあなたのおっしゃるとおりです――人々を無力化しているのは、無頓着さ(松下注: apathy 無関心)ではなく、大きな絶望感なのです。百人委員会(Committee of 100)は、圧倒的に大きな危険に拮抗するだけの抗議方法を一般の人々にもたせることを目的とした大衆の抵抗運動なのです。……おたよりくださいましてありがとうございます。
 敬 具 バートランド・ラッセル

(注)cripple: 不具にする;損なう,活動不能にする/consonant: 一致する

Dear Mr. Davie, (May 13, 1962)

Your letter to me is a most fascinating one, but I should point out to you that I have taken great pains to show the connection between the expenditure on defence and the role of defence in the United States. I have decried the military-industrial complex and in several recent articles have concentrated on this difficulty.
I am enclosing for your interest some recent literature of mine including an article for the Bulletin of Atomic Scientists in which I outlined the danger from America's Pentagon and the business men who are in league with it.
As for your suggestion that men feel a sense of futility, that is part of the argument I have been making in this country since 1945. You are quite right, it is not apathy, but a great sense of helplessness which cripples people. The Committee of l00 is a movement of mass resistance the purpose of which is to make available to people a method of protest consonant with the overwhelming danger. . . .
Thank you very much for writing.
Yours sincerely
Bertrand Russell

(From: Dear Bertrand Russell; a selection of his correspondence with the general public, 1950 - 1968. Allen & Unwin, 1969.)