バートランド・ラッセル「平和主義者」
* 原著:Bertrand Russell Speaks His Mind, 1960, chap.3.* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収
私(ラッセル)は第一次世界大戦時は平和論者であったが、第二次世界大戦時はナチス打倒を表明し平和論者でなかったので、筋が通らない(一貫していない)と言う人がいるらしい。だが、自分ではそうは思わない。私は、「すべての」戦争が(=戦争はすべて)正当だとか不正だとかいう見方をしたことは一度もない。
第一次大戦ではドイツと戦う理由がなく、第二次大戦ではナチスの世界観全体がひどいものだし、世界征服の野望を抱いていたことは明らかだから、この大戦の地獄から人類を救うため、ナチスを倒す戦いとして認めた。第一次大戦時、英国は中立で通すべきであった。英国がもしそうしていたら、戦争は短くてすんでいただろうだろうし、またナチスも生れず、ロシア革命も一九〇五年の革命の線で相当にいい状態を作り上げたかと思う。(ドイツによる)中立国ベルギー侵犯に対抗するため立ち上がったのは法的には正当であった。(しかし)正当づけができるならば正しい戦争である、とも言えない。
戦争を人間性の一部とみるのは、今後は違ってくるだろう。人間は扱い方で変る。人間の本性は変らないというのは全く馬鹿気ている。
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Because I thought Hitler was utterly intolerable. The whole Nazi outlook was absolutely dreadful, and I thought that if the Nazis conquered the world, as they obviously intended to do if they could, the world would beecome a place where life would be absolute hell and I thought we must stop this.