バートランド・ラッセル「地方自治」
* 原著:Authority and the Individual, 1949, chap.3 & 6
* 出典:牧野力(編)『
ラッセル思想辞典』所収
現代は万事が組織ずくめになっていて、自発性と自然から離れがちである。知識過剰、能率第一、情緒敬遠、合理主義などに悩むのが
現代人である。少なくとも、
「良い生活(善い人生)」の源としての創造的情緒についての理解が乏し過ぎる。現代人は重要事項については受身的であり、些細で枝葉末節なことについては積極的である。
真に人間生活に重要な事柄について、個人的創意工夫や発言権を回復する手段を発見しなくてはならない。
私は、多数の人口が生存するために必要な現代組織をただ批判したり、こわそうとしているのでは全然ない。この
組織を生き生きと有益なものにするためには、もっと'柔軟性'を持たせ、もっと地方自治・地方分権の余地を与えれば、非人格的な巨大組織の重圧や'画一主義'によって人間精神が圧迫されずに済むことを強調したい。
時代の歩みが、人間の考え方や感じ方がついて行けないほどに迅速に発展し、
中央集権化が強まるなかで、組織が現在のままの在り方であってはならない。また
(中央)集権と(地方)分権とのバランスをとる必要性を指摘したい。
地方分権の利益の一つは、個人に明るい参加活動の希望とその機会を与えることにある。中央政府とか世界(政治)とかに個人が参画する意識は、特別の個人にしか生れない。だが、
身近な地方問題、あるいは居住地の役場、組合、委員会には参画(参加)も可能だし、その最終決定を無関係で無縁な厄介事と感じないですむ。役員選挙、代議員選出で参画の実感がもてる。自分の力が及ぶという自覚なしに、改良や進歩はない。参画の実感こそ組織生命を活性化する要素でもある。
One of the advantages to be gained from decentralisation is that it provides new opportunities for hopefulness and for individual activities that embody hopes. If our political thoughts are all concerned with vast problems and dangers of world catastrophe, it is easy to become despairing. ... Unless you are one of a very small number of powerful individuals, you are likely to feel that you cannot do much about these great issues. But in relation to smaller problems - those of your town, or your trade union, or the local branch of your political party, for example - you can hope to have a successful influence. This will engender a hopeful spirit, and a hopeful spirit is what is most needed if a way is to be found of dealing successfully with the larger problems.