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牧野力(編)『ラッセル思想辞典』より

貴族

(From: Education and the Social Order, 1932, chap.11.)

 日本では、イギリスのようなはっきりした上流階級は形成されていませんが、層は薄くても存在しないわけではありません。天皇家、宮家、それから天皇家や宮家に姻戚関係をもつ(あるいはもとうと努力している)、少数ではありますが上流階級が存在します。英国における貴族の誕生も武力を背景としたものですが、現在どれほど洗練されているように見えても、日本においても皇室の誕生・草創期は武力を背景としたものだったと想像されます。その事実をカモフラージュするために「神話」が利用され、戦前は愛国心教育のなかに組み込まれました。


 階級の不平等は、文明の光が射した初期から今日まで存在し続けている。野蛮人種(未開人種)の間では、今日においてさえ階級関係はまだ非常に単純な形のまま残っている。(例:妻を富の源とみなす考え方から、酋長が数人の妻を持つ部族がある。)
 原始的な不平等の形態はやがて更に他の複雑なものになった。主として、不平等は相続財産と結びついたものとなった。だからすべての家父長制社会においては、それは男系の相続と結びついた。元来、大きな富は武勇に負っている。非常に秀でた戦闘家は富を得て、それを息子に伝えた。武力によって得た富は土地であったので、今日でも土地所有は貴族のしるしである。そして貴族とは理論上、先住者を殺して土地を得、その土地をすべての他の侵入者から守り通してきた封建諸侯の末裔(子孫)であるということになる。(右写真:1907年、35歳のラッセル/松下注:このように貴族を酷評するラッセルですが、ラッセル家(ベッドフォード公爵家)は英国を代表する(英国王室を含め10本の指のなかに入る)貴族でありながら、ごく特別の例外を除き、伯爵の称号は極力使用しなかったという事実は注目に値します。)

Originally, the greater wealth of certain persons was due to military prowess. The successful fighter acquired wealth, and transmitted it to his sons. Wealth acquired by the sword usually consisted of land, and to this day land-owing is the mark of the aristocrat, the aristocrat being in theory the descendant of some feudal baron, who acquired his lands by killing the previous occupant and holding his acquisition against all comers.