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バートランド・ラッセル「科学的方法の限界」

* 原著:Scientific Outlook, 1931, Part I, chap. 3: Limitations of Scientific Methods
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典



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(要旨訳です。)
 科学的方法の限界は次の三点に集約できるであろう(may be collected)。

 第一、帰納の確実性に関する疑問(この疑問は許容さるべきかも知れないが、帰納は論理の解決不能の問題を残す。)

 第二、経験されるものから(いまだ)経験していない領域への推論の困難さ(無経験への推論に関する問題は物理学者には本質的でなくても、論理学者には極めて重要である。)

 第三、経験していない領域への推論は可能であると認めたとしても、この種の推論はきわめて抽象的性質を帯びているに違いなく、また、従って、通常の言語(自然言語/日常言語)が使用されている場合には、通常の言語が与えると思われるよりも、(実際に)与える知識はより少ない。(太陽や星の物質的世界は極めて抽象的なものである。感情は抽象を嫌う。だが抽象力は知識の本質であり、抽象の増大は科学の知的勝利の増大となる。)

【 The limitationss of scientific method may be collected under the three heads:
(1) The doubt as to the validity of induction;
(2) The difficulty of drawing inferences from what is experienced to what is not experienced;
(3) Even allowing that there can be inference to what is not experienced, the fact that such inference must be of an extremely abstract character, and gives, thereofore, less information than it appears to do when ordinary language is employed. 】