バートランド・ラッセル「人口(圧迫)と戦争」
* 原著: Population pressure and war, 1957.In: The Human Sum, ed. by C. H. Rolph(London; Heinemann, 1957.
Repr. in: B. Russell's Fact and Fiction, 1961.
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』所収
ラッセル英単語・熟語1500 |
人口増による圧迫は、太古の時代から人間生活の重大問題であったが、現在の状勢を従前のもの違ったものにしている新しい要素がいくつかある。即ち、
- 科学戦の生む完全な破壊(の可能性)
- (人口増を吸収可能な)どこの国の領土でもない未開地が地球上にほとんど残されていないこと
- (医学の進歩による)死亡率の減少
以上の理由からして、たとえどのような手段をつくそうとも、次の20年間に世界の多くの最も重要な地域で貧困と栄養不足が増大するであろうことは、ほとんど確実なことと言える。この下降カーブは、人口の増加率が弱まるまで続くであろう。生活条件の悪化は、不満を増大させ、世界の繁栄している地域をうらやむ気持ちを高めることになる。こうした感情は、冷静に見れば誰にも利益をもたらさない場合でも、戦争を発生させがちなものである。
(The deterioration in living conditions must be expected to produce increasing discontent and increasing envy of the more prosperous parts of the world. Such feelings tend to produce war even if, on a sane surevey, no good can come of war to anybody.)