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バートランド・ラッセル「本能と理性」

* 出典:『ラッセル思想辞典』所収
* Source: Mysticism and Logic, and Other Essays, 1918, chap.2.

 本能と理性の対立は、常に哲学上の問題になる。十八世紀には'理性'を優先させ、ルソーと浪漫主義運動は'本能'を優越させた。ベルグソンは「直観」の名の下に、本能を形而上学的論理の唯一の媒介者たる地位に昇格させた。実際には、本能と理性との対立という観念は、大部分架空のものである。
 理性は、創造的な力というよりも調和・統制する力である。最も純粋に論理的な領域においてさえ、新しいものにまず到達するのは直観的な洞察力である。
 本能と理性との衝突は譲歩を絶対拒否し、断乎たる決意をするような場合に起る。本能は人間のすべての能力同様誤りを犯しやすい。理性の弱い人は他人事なら認める事柄を、自分の事になると一向に認めようとしない直接には実際的でない哲学上の問題で、非常に強度な本能的信念が時に全くの誤謬に過ぎないことがある。
 理性は、われわれの諸信念が相互に両立しうるかどうかを検討し、疑わしい場合にいずれかの側に有りうる誤りの源を確かめる調和的媒介者である。この場合、理性は本能全体に全く対立せず、ただ、本能が関心を抱く一側面のみを盲目的に信頼したり、他の諸側面を無視したりすることに対立するのである。理性が誤りを正そうとする力は、本能のもつ一面性に向けられ、本能それ自体(本能全体)には向けられていない。


ラッセル英単語・熟語1500
... Reason is a harmonizing, controlling force rathe than a creative one. Even in the most purely logical realm, it is insight that first arrives at what is new.
Where instinct and reason do sometimes conflict is in regard to single beliefs, held instinctively, and held with such determination that no degree of inconsistency with other beliefs leads to their abandonment. Instinct, like all human faculties, is liable to error. Those in whom reason is weak are often unwilling to admit this as regards themselves, though all admit it in regard to others.  Source: Bertrand Russell : Our Knowledge of the External World, chapter 1: Current Tendencies, p.31..
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