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バートランド・ラッセル「イメージ」

* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典
* Source: The Analysis of Mind, 1921, chap. 8.



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 中性一元論(注: neutral monism)において心が構成される場合中性的素材(注:「もの」でも「こころ」でもない素材)は主として感覚であるが、ラッセルはこれに過去の感覚の模写としてのイメージを加えて考える。イメージの生起は感覚のそれとは異なり、習慣や過去の経験によって支配される。それが従う因果法則は記憶法則とよばれる。すなわち、ある感覚の複合体を体験したことのある人間にとって、その複合体の一部の再来が全体の回想を喚び起すという法則である。
 イメージにとって重要なことは、それが先行する感覚に類似するという点である。感覚が有するもろもろの性質のうちどれをどのように想い描いて複合(的)な性質とするかは不確定であるとしても、個々の単純な性質はありのままに模写されている。そもそも一度も見たことのない単純な色や、一度も聞いたことのない単純な音のイメージなどはありえない。現に感覚として与えられていないものに関してわれわれが何らかの行動をなしうるのもイメージ感覚の代替物だからである。そしてこのイメージは体験の進行に伴ってますます多く言葉に置きかえられてしまう傾向がある。(遠藤)
(There are some who believe that our mental life is built up out of sensations alone. This may be true; but in any case I think the only ingredients required in additon to sensations are images. What images are, and how they are to be defined, we have now to inquire.)