バートランド・ラッセル「人間個人が持つ3つの側面」
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』* Source: The Impact of Science on Society, 1952, chap.4.
それぞれの人間を、(1)「個人(一般人,普通の人)」として(as a common man)、(2)「英雄」として(as a hero)、(3)「機械(組織)の中の歯車の一つ」として(as a cog in the machine)、の3つの側面からみると、3つの異なった政治哲学が導かれる。第一のものは古風な'デモクラシー'に、第二のものは'ファシズム'に、第三のものは'共産主義'に導くだろう。
すべての人間は状況が異なれば、これら3つの側面を例外なく示す。著名な詩人でも住民登録の対象としては「一個人」である。日常生活では、目立たない単調な生活者でも、時に溺れる子を救えば、あるいは勇壮で感動的な戦死をすれば、他人に奉仕する「英雄」とみられる。集団組織の中で働く者は当然「歯車の一つ」である。
Everybody exemplifies all three points of view in different situations. Even if you are the greatest of living poets, you are a common man where your ration book is concerned, or when you go to the polling booth to vote. However hundrum your daily life may be, there is a good chance that you will now and again have an opportunity for heroism; you may save someone from drowing, or (more likely) you may die nobly in battle. You are a cog in the machine if you wark in an organized group. e.g. the army or the mining industry.
現代科学は個人を「歯車」にする程度を強化し、「英雄」あるいは「一個人」として当然与えられるものを減殺する。民主主義者の仕事はこの危険を防ぐ政治哲学を展開することである。良い社会体制は、どの人間にもこれら3つの側面をもてるようにしてくれる。個人が英雄として世のため他人のためになる生き方をするには、創意工夫・発議する機会に恵まれねばならない。
一個人としては生活が保障されなくてはならない。また、歯車となる個人は社会的に有用な存在でなければならない。歯車的心情は英雄的心情の正反対で、歯車肯定論は機械崇拝心理によって正当化され、人間的な視点からは最も破滅的になりやすい。・・・。中略。
科学技術は社会を一層有機的にするから、個人を歯車にする度合は増大する。そうならないため、種々の工夫が必要となる。
その方法の基本は、歯車でありながら、人間的に破滅感を味わない生き生きとした気持で生きられる条件として、組織内部で、創意工夫の機会に恵まれ、発議権が保障され、生き甲斐を感得できるように、組織内部で対内民主化を実現することにある。これが権限委譲である。・・・。後略。
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