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D.H.ロレンスについて

R.カスリルズ、B.フェインベルグ(編著)『拝啓バートランド・ラッセル様_市民との往復書簡集』

目 次


 '・・・。現在私たちは、D.H.ロレンスの作品を勉強していますが、先日、あなたが昔彼と親しかったことを、ある本を読んでいて知りました。ロレンスについて何か教えていただけないでしょうか。彼は何を信じていたのでしょうか。彼はどのような人物だったのでしょうか。・・・。'

ラッセルからの返事(1962年10月22日)


ラッセルの言葉366
 拝啓 ミス・ロバーツ
 ロレンスは、自分と同じ強烈な感情を共有しない人間を罰したいという欲望にとりつかれており、個人的な葛藤や、暴力をふるいたいという願望を持ち、合理主義を憎み、'血'をもって考える'(thinking with the blood)」という激しい感情(の重要性)を強調しました。
 かれは非凡な人間でしたが、好ましい人物ではありませんでした。彼は強烈な感情の支配を信じていましたが、それがどのようなものであるのかは、彼自身認識していませんでした。また、彼は勤勉な生活とか社会慣習というものは、天性の衝動を窒息させてしまうと感じていました。このことは知的な厳格さに対してももあてはまる(=知的厳格さも天性の衝動を窒息させる)と彼は思っていました。
 彼は、自分自身の極端な感情になじむことが難しく、自分と同様の感情を経験しているように見えないという理由で、普通の(平凡な)男女を軽蔑していました。
 そのような衝動は、著しく想像的な作品を生み出すことはできるでしょうが、自分自身の私的な経験から離れていても長所を持ちうるものとして世界を眺めることができる人間を生み出すことはないでしょう。
 私の『自伝的回想』(Portraits from Memory and Other Essays, 1956)の中に、D.H.ロレンスとの交際の経験を若干書きとめてありますので、それをご覧くだされば結構と存じます。
 敬具
 バートランド・ラッセル


. ..At the moment we are studying the works of D. H. Lawrence and the other day I read that you were once friendly with him. Please would you tell me something about him? What did he believe in? What kind of man was he?

Dear Miss Roberts, (October 22, 1962)
... Lawrence was a man who was consumed with a desire to punish [those] who did not share his intense feelings, borne of personal conflict and a wish to do violence he hated rationality and emphasised violent feeling-thinking with the blood'.
He was a remarkable man but not a likable one. He believed in the dominance of strong emotion about which he was not very clear and he felt industrial life and social convention stifled natural urges. He also felt this was true of intellectual rigour. His difficulty in coming to terms with the extremity of his feelings made him despise ordinary men and women because they did not seem to experience the same. Such impulses may create striking imaginative work but not a man who can see the world as possibly having merit apart from his own private experience.
(From: Dear Bertrand Russell, 1969)