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バートランド・ラッセルのポータルサイト



R.カスリルズ、B.フェインベルグ(編),日高一輝(訳)
『拝啓バートランド・ラッセル様(市民との往復書簡集)
目 次

IV.哲学関係書簡: 「クーチュラとポアンカレ」
(→松下(訳)に変更)

* クーチュラについて(『ラッセル自伝』より)


 ・・・。'数学の無限大'へのいくつかの本質的な貢献についてのあなたの勧告(recommendation)が,私は好きでした。この分野における最もすぐれた著作の一つについて言及させていただきます。それは、あなたの旧友ルイ・クーチュラが執筆した『数学の無限大について』と題する本です。彼はこの本を1896年に -あなたが『幾何学基礎論』を出版された1年前に- 出版しました。・・・。
 それから、先生はアンリ・ポアンカレをご存じでしょうか。かれはどんな方でしたでしょうか。


(ラッセルからの返事・1958年8月16日付/ラッセル86歳)

 拝復 ユアーグロー教授 (Prof. Yourgrau)
 ・・・。クーチュラ(Louis Couturat, 1868-1914: フランスの数学者・哲学者で、ライプニッツの研究で有名。1905年からはコレジェ・ド・フランスの教授。自動車事故で死亡)については、私は1897年(ラッセル25歳の時)に、 Mind 誌に、彼の 『数学の無限大について』(de l'Infini Mathematique) の書評を載せました。この書評が、私が彼と友情を結ぶきっかけとなり、その友情は彼が死ぬまで続きました。
 アンリ・ポアンカレ(Jules-Henri Poincare', 1854-1912:フランスの著名な数学者)については少し知っています。私たちは二回論争しました。最初は、非ユークリッド幾何学に関するものでした。その論争では彼のほうが正しく、私のほうが間違っていました。二回目は、'数学的帰納法'に関するものでした。彼はそれを'推論の原理'として考え、私は'有限数'の定義として考えました。この二回目の論争においては私が正しく、彼のほうが間違っていました。彼は非常に有能な人でした、そしてまたウイットに富んでいました。彼のひやかしていう「'論理学'は、もはや不毛ではない。なぜならそれは、'矛盾'を生むのだから。'Logistic is no longer sterile. It begets contradiction.」(日高氏は 'Logistic' を '兵站術'(へいたんじゅつ)と誤訳されている。)という'からかい'の言葉は,私を楽しませてくれました。しかし彼の哲学は、彼のカント崇拝のために損なわれていたと私は思います。
 敬 具 バートランド・ラッセル
(From: Dear Bertrand Russell; a selection of his correspondence with the general public, 1950 - 1968. Allen & Unwin, 1969.)