「平和行進(デモ)を禁止する?」(『拝啓バートランド・ラッセル様』所収書簡)
* 出典:R.カスリルズ、B.フェインベルグ(編),日高一輝(訳)『拝啓バートランド・ラッセル様_市民との往復書簡集』'・・・。僕は15歳半になる男子生徒です。あなたが結成された百人委員会(Committee of 100)が組織した平和行進(デモ)についての僕の見解を考慮に入れていただけたらたいへんありがたく思います。僕は水素爆弾に強く反対しており、水爆の禁止を願っています。しかし同時に、委員会のメンバーたちがそのことで行っているやり方も間違っていると思います。警察による取り締まりのために国家に経費をかけさせますし、公道に座り込むことにより一般の人たちに迷惑や不便を与える愚かな行いについて、あなたがたメンバーがよく考えてくれたならば、と思います。・・・。またあなたが、どういうわけで行進をしたり、舗道や車道に座り込んだりされるのか、その理由についてご返事をいただければたいへんありがたく思います。・・・。'
(ラッセルからの返事・1962年12月13日付)
拝復 マーティン君
ラッセルの言葉366 |
君の論拠を適用すれば、(平和)行進や座り込み(デモ)は、「単に」この地球上の'人類の生存'に関係したものにすぎないからやめさせるべきだ、ということになります。君も認めると思いますが、これはまったくおかしな態度です。・・・。(松下注:たとえば、すべての人がフットボール・ファンや相撲ファン(←優勝パレードの場合)であることはなく、ファン以外は、交通規制によって迷惑を受けることになる。少年が興味を持つそのような行事の場合は良いが、平和行進などはダメという15歳の少年の論旨というより「態度」はおかしいのではないか、というラッセルの指摘/写真出典:R. Clark's The Life of B. Russell(London; Jonathan Cape, 1975))
敬具 バートランド・ラッセル
Dear Mr. Martin,
Thank you for your recent letter. Football matches, motor car rallies, Royal occasions and many other sporting events cause the police much inconvenience and expense, but nobody suggests that these should be curtailed. Marches and sit-downs are merely concerned with the survival of man on this planet, and therefore, according to your argument, ought to be stopped. I think you will agree that this is a curious attitude.
(From: Dear Bertrand Russell; a selection of his correspondence with the general public, 1950 - 1968. Allen & Unwin, 1969.)