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ラッセル「人はなぜ神を発明するのか」(松下訳)

 ・・・。仏陀は大胆にも無神論者になりました。しかし他の宗教の創始者はそうなりませんでした。彼らは、無神論者であることを宣言するほど十分な勇気を持っていなかったと我々は言うことはできません。彼らはその時代における反逆的精神の持ち主でした。・・・。さらに、彼らの教えを全て最も広義にとらえれば、彼らのメッセージは全て、「一つの究極の存在(実体)を信じなさい、そして善い行ないをしなさい」ということであり、皆同じです。そのような奇妙な一致はどうして起こったのでしょうか?・・・。
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(ラッセルからの返事・1962年5月13日付)

 拝復 ミス・ナシラ様

の画像  お手紙、たいへんありがとうございます。仏陀は自分の思想が独裁的な僧職をt伴う無味乾燥な正統主義的教説にまで還元されることを望まなかったと主張される点において、あなたはまったく正しいと思います。しかし、彼はこの点では例外的な存在だったと、私は考えます。過去一千年間、多くの宗教的導師たちが、自分たちが究極の実在と考えるものはどういった存在であるか探求してきたというのは正しいだろうと思われます。しかし、彼らの多くは、この実在を、人間を支配する力を持った -それは疑いもなく、彼らが小さかった子どもの頃に、自分の父親が確かに持っていると考えていた力ですが- 一つの人格として表現しました。

 あなた、私に解決してほしいと望んでいる問題は、次のように答えることができると考えます。人々はこの世が苦難の場所だということを見出しています。そして多くの面で恐怖心を抱いています。彼らは、自分たちのそうした問題に対処することができないと感じています。また、突然の事故、病気、死、不幸の可能性のもと、自分たちに敵対的な環境の中で、孤独で存在する恐怖に面と向かうことはできないと感じています。その結果、彼らは、神と名づける強力な存在を発明するのです。これは勇気を欠いているのだという意見に私は賛成です。また、神なるものを信じた多くの宗教的指導者たちが迫害に直面して一種の個人的な勇気を示したことは事実ですが、彼らが'そのような(神のような)神話の慰めのない世界に面と向かう知的な勇気を欠いていたと私は信じます。と言いますのは、最後まで分析していくと、我々人間に関する事柄で重要なのは、人間としての責任であるからです。
 私の『なぜ私はクリスチャンでないか』(Why I am not a Christian, and Other Related Essays, 1954/邦訳書名『宗教は必要か』)をお読みいただければ大変嬉しく存じます。その本の中に私は、「自由人の信仰」と題した随筆をおさめてあります。このエッセイの中で、私の立場を十分に説明してあります。
 あなたの興味深いお手紙に感謝します。
 敬 具 バートランド・ラッセル


.... I think the problem which you wish me to solve can be answered in this way. Men find the world a difficult place, and in many ways frightening. They feel that they cannot cope with their problems, and that they cannot face their fear of being alone in a hostile environment, with the possibility of accident, sickness, death and misfortune. As a result, they invent powerful figures whom they name gods. I agree that this lacks courage, and although it is true that many religious leaders who have believed in a deity have had a kind of personal courage in the face of persecution, I believe that they lacked the intellectual courage to face the world without the comfort of such a myth. For in the final analysis, it is human responsibility which is significant in our affairs. I should be very happy if you would read my book Why I am Not a Christian, in which I have included an essay called 'A Free Man's Worship'; in this I explain my position fully.
Thank you for your interesting letter.

Yours sincerely
Bertrand Russell

(From: Dear Bertrand Russell; a selection of his correspondence with the general public, 1950 - 1968. Allen & Unwin, 1969.)