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バートランド・ラッセル「第一原因による神の存在証明法について」

* 原著:Why I am not a Christian, and Other Essays on ...,, 1957, chap. 1.

 最も単純で一般に理解しやすいのは,第一原因による神の存在証明法である。この世のすべてには原因があり,その原因の連鎖をどんどん遡ると,「第一原因」にたどりつくと考える。この考え方は,哲学者や科学者が厳しく検討した結果,今日では重要視されなくなり,昔のような活力を失った。

 私も少年時代から久しくこの証明法を真理と思っていた。十八歳のある日,J.S.ミルの自伝の中のミル親子の対話から,この考え方の誤謬に気付いた。
 もしあらゆるものが原因をもたねばならないなら,神にも原因がなければならない。もし原因なしに,何かが存在できるならば,その何かは,神でも世界でもよいことになる。(松下注:「悪魔」がこの世の中を創造した,ということも反証できなくなる。)

 物事には必ず初めが必要だという考え方は,実際には,人間の想像力の貧困によるものである。
(松下注:写真は,ラッセルの創作 Nightmares of Eminent Persons, 1954 の表紙)