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ラッセル「アメリカの2つの特徴」

牧野力(編)『ラッセル思想辞典

* From: In Praise of Idleness, 1935, chap.10: Modern Homogeneity)



 アメリカにはヨーロッパ人旅行者を驚かせる -少なくとも私が判断してよければ- 二つの特徴がある。(つまり)一方で(南部を除いて)各地の様子が極端に似ていること、他方で各地が自分の土地の特殊性を強調したがっていること・・・即ち、同質性と差異性の共存という特徴である。
The European traveller in America -- at least if I may judge by myself -- is struck by two peculiarities: first the extreme similarity of outlook in all part of the United States (except the old South), and secondly the passionate desire of each locality to prove that it is peculiar and different from every other. ...

 南部は農業的で貴族的で回顧的なのに、南部以外は工業的で民主的で未来に憧れている。だがアメリカの農業家の考え方は、工業的で機械的で、農産物の市場相場を気にしている。農家は「事業家」「資本家」である。欧州やアジアの農家とは違う。アメリカは人間が機械を駆使し生産する世界である。物質面だけでなく、思想や感情の面でも同じである。この点から、もし同じタイプの世論を支持する人間しか生れないとしたら危険である。

 学校の授業は標準化され、教会は、一定の大衆感情で時事問題を扱った模範的な説教を全国に放送する。新聞も書評も画一的である。ソ連もこの点で画一性が徹底している。アメリカの教養ある知的婦人の書籍選択方法も全国共通である。限られた本だけを広く多数売るという点で欧州と違う。欧州では多種多様の本が少しずつ読まれる。物質的生活の画一性とはちがい、この文化面のアメリカの画一化には問題がある。
 画一化には、共通点の故に協力することになる人々が生れ易い面と、少数派の意見が生れにくく、かつ、多数派に迫害される面とがある。
It must not be supposed that the tendency towards unifomity is either wholly good or wholly bad. It has great advantages and also great disadvantages: its chief advantage is, of course, that it produces a population capable of peaceable co-operation; its great disadvangae is that it produces a population prone to persecution of minorities.

 移民の多いアメリカでは、民衆の同化を目指す公教育が行われるのは当然としても、軍国主義が主流となると甚だ危険である。画一主義の強いアメリカでは、「民主主義とは万人が同じになることを命令するもの」という誤解がある。同じ民主国フランスの民主主義観とは違う。アメリカのあらゆる職業人が実業家の型にはまってしまう。オーケストラをバイオリンだけで構成すべきだというような考え方だ。社会は多様性を生かす有機体でなければならない、という点を程良く理解していないようだ。知力より腕力を礼賛し、腕力の強さ(腕力に強い人間)に対しては謙虚になるようだ。
 標準化は普通人の幸福増大に役立つが、例外的なあるいは独創的な人間の育成にはならない。・・・この傾向は、機械化と共に、欧州にも波及する気配がある。国民間の差が減るのは国際主義には好都合であろうが。
Standardization, though it may have disadvantages for the exceptional individual, probably increases the happiness of the average man, since he can utter his thoughts with a certainty that they will be like the thoughts of his hearer. ...