最後に、両者の宗教に対する態度を述べたい。ラッセルは、'恐怖より生れた病気' と宗教をみなす。人間を、霊と肉とに分けるのはおかしいと彼はみる。そして、宗教の害毒、特に教会制度を排撃し、宗教と教会が一体今までどれだけよいことをしてきたか、と反問する。宗教から人間が自由になるためには、教育、政治、経済の改革が必要だが、それが可能と考える。しかし、両者とも、純化された宗教とも称すべきものを心に抱く。アインシュタインは宇宙的宗教感情という言葉を用い、デモクリトスやスピノザを聖フランシスと同列に見ている。ラッセルは、"山上の垂訓" に真理ありとし、基督は地獄を認めた点で、仏陀やソクラテスに劣ると言う。アインシュタインは、自己の宇宙的宗教感情の発露を、"わが宗教"(My own religion)と呼び、自己を religious unbeliever としていた。ラッセルは真の宗教を求めて、教会宗教を捨てたのであろう。両人の尊敬するものと拒否するものとはほぼ一致する。(文責=編集部)