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バートランド・ラッセルを読む会(第133回)読書会メモ (2001.10.27,松下担当分)

ラッセル『人間の知識』

[テキスト]『人間の知識』(みすず書房版・バートランド・ラッセル著作集 第9巻/On Power, 1938)

第6部 科学的推理の要請 Postulates of scientific inference 

科学的方法を正当化するために必要な5つの要請(邦訳p.380)
(1)準永続性の要請 postulate of quasi-permanence
(2)(分離可能な)因果の線の要請 ← 第6部第5章 postulate of separable causal lines
(3)因果の線のなかでの時間空間的連続性の要請 postulate of spatio-temporal continuity in causal lines
(4)一つの中心のまわりに配列した相似構造の共通の因果的起源の要請(構造的要請)  ← 第6部第6章
Postulate of the common causal origin of similar stuructures ranged about a centre, or simply, the stuructural postulate
(5)アナロジーの要請 postulate of analogy

第7章 相互作用 interaction

□直近の数章で扱って来た種類の「相互作用」は、「内在的intrinsic」、と呼べるもの
 ・内在的因果関係の法則・原理: 「ある時刻と場所における一つの事象が与えられれば、その近くのあらゆる時刻に、その近くのなんらかの場所で一つのよく似た事象がおこることはふつうである。」

□ここで扱う「相互作用」は、「玉突きの球の衝突のような(外在的?)相互作用」
・われわれが見いださなければならないのは、たとえば、一つの玉が一つの衝突後にとる新しい方向を決定する法則

□任意の有限個の観測が与えられたとき、それらのすべてによって立証される公式は常に無限個ある。
 たとえば、月曜日の火星、火曜日の木星等々、各曜日について、そられの天体の天球上の位置の記録をとりだすと、フーリエ級数を扱う技術があれば、現在までのそれらのすべての記録に適合する公式を「多数」つくりだすことができるが、たいていの公式は「未来にはあてはまらない」。
 したがって、因果的に選ばれた任意の一組の定量的観測に適合する公式が存在するということはトートロジーであり、他方、過去の観測に適合する公式は、未来の観測結果を予言することができるということは虚偽である。

□われわれが発見した法則は単純だから、おそらく、すべての法則は単純であると帰納的に論ずることはあやまりである。
 例1:落体の法則(ガリレオ)→重力の法則(ニュートン)→重力場(アインシュタイン)
 例2:ケブラーの第一法則
 ・三つの座標r、θ、φ(r=地球からの距離)によって決定される位置をもち、θとφは観測でわかるが、地球からの距離rは、推理による。

□論理によっては必然的にされないいくつかの重要な段階

 1)われわれの視覚感覚は、外部に原因をもつと仮定される。
 2)これらの原因は、それらが視覚感覚をひきおこしていないときにも存続すると仮定される。
 3)r座標はまったく観測の外にある。rの推定値の可能などんな体系も、rを非常に小さくするもの以外は、観測事実と矛盾しない。
 4)rに対するケプラーの公式は、観測と矛盾しないもっとも単純な公式である。これが唯一の長所である。

 以上、やや散漫な議論がもたらすように思われる結論は、

 根本的な要請は、「因果の線」という要請である、という結論である。
 この要請によって、われわれは、与えられた任意の事象から、その近くのすべての時刻と、ある近傍の場所で確からしいことについて何らかのこと(多くのことではない)を推論することができる。
 一本の因果の線が、もう一本のものとからみあわないかぎり、かなり多くのことを推論できるが、因果の線がからみあう場所(すなわち相互作用)では、この要請だけではもっとずっと限られた推理しか許されない。しかし、定量的測定が可能な場合には、一つの相互作用の後の測定的に区別できるさまざまな可能性の数は有限である。したがって、観測プラス帰納は、一つの一般法則を高度に確からしくすることができる。こういうやり方で一歩一歩進めて、科学的一般化を正当化することができるように思われる。