バートランド・ラッセルを読む会(第10回)読書会メモ 010
「ラッセル権力論」(1980.06.29)
[テキスト]東宮隆(訳)『権力』(みすず書房版・ラッセル著作集第5巻/On Power, 1938)
第12章 権力と政治形態
組織(体)の目的・意図を別にすれば、組織(体)の最も重要な特徴は、(1)規模、(2)成員に及ぼす力、(3)成員以外のものに及ぼす力、(4)政治形態の4つである。
(1)については、第13章の「組織体と個人」で考える。
(2)成員に及ぼす力: 国家以外の組織(体)で法的に認められている組織が、その成員に対してふるう権力は、法によって限定されており、・・・、それは、要するに除名の権利にかかっているものである。・・・。これに対して、国家がその国民に及ぼす権力はそれどころではなく、憲法の規定が勝手な逮捕や略奪を禁じているかぎり、それをのぞいて、無制限なものである。
(3)成員以外の人々に及ぼす力: 一つの国家が外国人に関してもっている権力は、戦争(の結果)及び戦争の脅威しだいでどうにでもなる(大きくなったり小さくなったりする)。・・・。民間組織体の対外的権力は、・・・、主として、ボイコットやその他もっと極端な形式のおどしに頼るものである。・・・。民主的な国々では、最も重要な民間の組織体は何といっても'経済上のもの'である。秘密結社とちがって民間の組織体は非合法活動に訴えずにそのテロリズムをふるうことができる、(自分たちの組織に所属しない人々に餓死の脅威を与えることができる。)
(4)政治形態(統治形態)の問題
3つの政治形態:絶対君主制、寡頭政治、民主主義
1)絶対君主制:ワンマン支配
・君主の統治をうける大多数の人々がそうした権力に屈服するのは、初めは恐怖心からであり、後になって慣習と伝統の結果として権力に従っているまでだというのが普通である。・・・。
・臣民の利害と王の利害が一致する場合は別として、この政治形態は、一般に、その臣民の利害に対して無関心である。・・・。
・王は、2つの原因によって邪道におちいることがある。即ち、
①うぬぼれ
②側近集団がすでに、その支配力を失っているのに彼等に依存する場合
2)寡頭政治
・種類いろいろ A.世襲の貴族階級の支配 B.金持ちの支配(中世の自由都市)
C.教会の支配 D.政党の支配
3)民主主義(政体)
・一つの政治形態としてみた民主主義のむずかしさは、この形態が、進んで妥協しようとする気持ちを要求することにある。
・本質的限界:政府の行う決定には、迅速でなければならないものと、専門的な知識を要するものとがある(戦争、通貨の問題・・・) 従って・・・
・今日では、放送,迅速な移動,新聞などのために、・・・、代議土の重要性は減少することとなり、逆に、指導者の重要性は増大することとなった。
・統治地域が広くなった場合に、民主主義をいかにしてうまく続けていくかという問題は難問だが、この点はあとの章でもう一度考える。
(5)経済組織上の形態の問題
資本主義下の企業では、権力は投資家の間に分たれ、それは、ある場合には君主政治的であり、ある場合には寡頭政治的であり、また、ある場合には民主主義的であるだろう。
第13章 組織体と個人
本章では、一定の個人と関係をもつ幾つかの組織体を考察する(個人を考察するにあらず)
A.組織体は、個人に対して2通りの仕方で影響を及ぼす。
1)個人の願望あるいは個人の利益と考えられる事柄の実現を促進するためにつくられた組織
例:保健所、産院、教育機関、児童福祉施設・・・
2)他人の正当な利益を妨げることを禁ずるために意図された組織体
例:警察及び刑法
B.個人が種々の組織に対してもつ関係の分類として、もう一つ別のもの。
個人がその組織体の、
1)顧客である場合
例:製薬会社,ビール会社,自動車会社
2)自由会員である場合
例:政党,教会,クラブ
こうした組織体の多くは、同種類に属する組織体で競争相手になるものにたちむかう。
その結果として生ずる競争は、この競争に興味を覚える人々に対して権力衝動のはけ口を与えてくれる。
3)強制された会員、もしくはその組織の敵対者
例:一番重要なのは「国家」
・国家間の競争は政党などとはことなり、全部ひっくるめての競争である。