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バートランド・ラッセルを読む会_読書会レジメ 007 - 「ラッセル権力論」(1980.04.27)

[テキスト]東宮隆(訳)『権力』(みすず書房版・ラッセル著作集第5巻/On Power, 1938)

ラッセル『権力論』

第7章 革命を呼ぶ権力

1.初期キリスト教(ただし、権力と社会組織に影響を及ぼした限りでのキリスト教)
★碧海純一『ラッセル 』

 信者の数がふえ、教会が強力になっていくにつれ、国家に影響を及ぼしたいという欲求が盛りあがっていくのは避けがたい。・・・。
 権力に関係して考えた場合、キリストの教えのうちで最も重要なものは、「われらは、人に従うよりもむしろ神に従うべきものなり」という言葉であった。・・・。この言葉はキリスト教徒によって、二通りの解釈が施されている。つまり、神の命令が個人の良心に伝えられるのは、'直接'か、でなけれは'教会'を仲介にして間接的にか、のいずれかだというのがこれである。・・・。それゆえ、キリスト教の教えは、どうしても国家を弱めることになって、個人の私的判断の正しさのほうにくみするか、教会のほうにくみするか、いずれかになる。・・・。
(教会に権力を与えてくれた革命は)大いに国家というものを薄弱にしたばかりでなく、後の幾つかの革命の端をも開いた。そのうえ、個人主義という、初期のころのキリスト教の教えの重要な一要素をなしていたものが、依然として、神学上の反逆と世俗の上での反逆双方をあおる危険きわまりない源として残ることとなった。・・・。
 キリスト教における無政府主義の炎は、中世全体を通して深くいけこまれていたとはいえ、決して消えてしまったわけではなく、宗教改革として、突如として大きく燃えあがり、'燎原の火'(りょうげんのひ)のようにひろがっていったのである。

2.宗教改革
 権力という見方からすれば、宗教改革は二つの面で、われわれに関係がある。その一つは宗教改革の無政府主義が教会を弱めたということであり、第二の点は、教会の力が弱くなったために、逆に、国家が強くなったということである。
 Martin Luther, 1483-1546.
 ・イングランドでは、ヘンリー八世(1491-1547)は・・・みずから英国教会の頭目と称して、彼は宗教を世俗のものにし、国家的なものにする仕事にのりだした。・・・。ヘンリーこそは、・・・教会の影がうすくなったのを機会に、国家の権力がどのくらいのものかということを世界に明らかにした最初の人であった。
 独立教会派の人々 The Independents は、国家も教会も同様に神学的権威とは認められぬとして、両者を斥け、個人の判断の正しさと、また、その必然の結果として、宗教上の寛容とを、自らの権利として主張したのである。・・・。(このような考え方は、人権説と結びつき)人権説は、クロムウェル(1599-1658)に従ったがために敗北を喫した人々によって大西洋を渡り、ジェファーソンによってアメリカ憲法となり、そのあと、再びヨーロッパにもち帰られて、フランス革命となったのである。

3.フランス革命とナショナリズム
 宗教改革から1848年に至るまでの西欧世界は、いわば人権革命とも呼ぶべき絶えざる変動を経験した。・・・。(この運動の'ナショナリズム'の面は、次第に'人権'の面を圧倒するようになっていったが、しかし当初は、人権の面の方がどちらかというと重要だった) (人権の擬護者たちは)いかなる人間も然るべき''の手段をへずに、みだりに生命や自由を奪われることがあってはならない、と主張した。・・・。この人権という教説が、そもそもの起源からいっても、そこに含まれる感情からいっても、反政府的なものであることはあきらかである。・・・(国家の干渉は必要最小限に・・・)・・・政府の決議がどうしても必要な場合、そのような決議は宣しく --と人権主義者は強く主張する。--多数者か多数者の代表による決議であって、王や僧侶の権利のような、恣意的で単に伝統的なものにすぎない権威であってはならない。このような考え方は、次第に文明世界全体に広まって、自由主義という独特な精神態度を生みだすにいたったのである。

4.ロシア革命
 マルクス主義者たちも、他の進歩主義者と同じく、民主主義を擬護し、言論の自由、報導の自由およびその他の自由主義的政治機構を擁護した。だがソビエト政府は、ひとたび権力を掌握するや、盛時のカトリック教会の教えに逆もどりした。即ち、積極的にどんどん教えてもいくし、また、およそ競争してくる教説はことごとくこれを抑圧して、真理を宣伝するのが、権威たるもののなすべき仕事と考える。・・・。
 わずかに目新しくでてきたものは、政治的権力と経済的権力との混淆でありこれによって政府の統制は非常に増大させることができた。・・・。
 自由主義の衰退には、技術的および心理的な多くの原因がある。これらの原因の一つとみられるものに、戦争技術の変化があり、生産技術の変化があり、宣伝の便宜の多くなった点があり、また、それ自体自由主義の教説の所産であるナショナリズムがある。

会員消息
Hさん 4月から、母校の女子校の3年生に「世界史」を教えているそうです。専門ではないため、夜も余り眠らないで勉強しているということですが・・・。
Fさん山梨県では、3年間は僻地校に行かなければいけないらしく、現在、青梅線の終着駅(始発駅?)から車で40分位の山の麓にある全校70名ほどの中学校で英語と美術(こちらは無免許)を教えているそうです。
Sさんこの4月に千葉県立中央図書館に就職したSさんは、(新人は2~3年はブックモビル(移動図書館車)に乗らないといけないらしく)現在、「旅人号?」(バスを改造したもの)に乗って、飛び回っているもよう。公共図書館は日曜日に開いて、翌日(月曜日など)を休みにしているところが多いので・・・。
Kさん為替契約課に配置換えになったらしい。
Iさん相変わらず忙しそう。

★お知らせ:湿式・電子リコピー設置: これからは、松下宅で読書会をやる場合は、レジメ(原稿だけつくっていただければ、コピーはこちらでできます。