ラッセル協会会報_第8号 |
相手を邪悪視し、自己の優越感を反省しない者は、東西両陣営の冷戦に似ている。
うぬぼれ根性から、尊大になったり、逆に劣等感にとらわれたりする。人間めいめいには全く独特のとりえがある。己を隣人より優れても劣ってもいないと心底から悟れば、真の平等意識が身につき、争いも少なくなり、迷信のとりこにもならない。
今、人類は破滅の危険にさらされ、西欧全体に宗教復活の兆候があるが、これは恐怖心の産物で、見当ちがいな考え方である。人類を却って誤るものである。
第一次大戦の発生にキリスト教は大いに関係があり、ナチスと共産主義とは大戦の所産である。キリスト教に人類救済の力なく、歴史的に証明ずみである。共産主義は、中世の教会のようで、狂信、偏執、不寛容を特色とする。
理性、寛容、相互依存が今の世界に必要である。豊かで知恵のある知力が幸福な世界を築く鍵である。
スコラ哲学者、中世の教会哲学者が、"神の存在" を論証したと自称する論理は、アリストテレス流の古臭い論理学で、今は否定されている。カトリック教会のお抱えの論理学者だけは別である。神の摂理、計画という馬鹿げた議論はその一つである。ダーウィンがこれを論破・論証した。全知・全能・慈悲深い神という発想もおかしい。
教育は、論理実証により考える習慣を青年に育成し、狂信奨励の教育を排し、精神的自由を目標とすべきである。
今の世界には寛大な心情ととらわれない理知とが必要で、これらは、頑固窮屈な組織からは生れない。組織の新旧は関係ない。