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岩波文庫版『ラッセル結婚論』の底本について

* 2001年03月11日掲載)
 巻末の訳者解説において、訳者の安藤貞雄氏は、Marriage and Morals の第6刷(1938年刊)を底本(テキスト)として邦訳したと書かれています。ラッセルはこの本を出版した後、一部の人から不適切な表現があると指摘され、1963年にだされた Unwin Books 版(ペーパーバック版)の第3刷りでその部分は修正されています。安藤氏が底本としたハードカバー版の第6刷は訂正前のものですのでご注意ください。
 なお、同じく安藤氏の訳で、On Education, 1926(『教育論』)と The Conquest of Happiness, 1930(『幸福論』)も岩波文庫版として邦訳出版されています。

Marriage and Morals の(原書)テキストについて

 ラッセルは一度発表(出版)したものは、誤字・脱字の訂正以外は、ほとんど後の版で改訂はしていませんが、Marriage and Morals については、1ケ所だけ後の「刷」(「版」でありません。)で訂正しています。岩波文庫の邦訳は訂正前のものを使っています。

 訂正されているのは第18章「優生学」の一部で、黒人の知力は、相対的・平均的に言って白色人種や黄色人種より低そうだというような表現をしていますが、不適切ということで以下のように訂正しています。
 特定の本を批評する場合は欧米ではどの版や刷を使ったかを示すのがルールとなっていますが、皆さんもこの本について言及される場合は、ご注意ください。

(訂正前)
 It seems on the whole fair to regard negroes as on the average inferior to white men, although for work in the tropics they are indispensable, so that their extermination (apart from questions of humanity) would be highly undesirable.

(訂正後)
 There is no sound reason to regard negroes as on the average inferior to white men, although ...