頭脳明敏な、有能な、献身的な人々であって、そのすべてが合衆国に対して最大の愛情を抱いていた、- おそらく、こうした情勢のもとで集め得る最も頭脳明敏な種類の集団であった。もし彼らのうち六人が合衆国大統領であったならば、世界は爆破されてしまったかもしれない、とわたくしは考える。
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国家安全保障会議の実行委員は、時間の少くとも九〇パーセントを、部隊、爆撃機、軍艦のいずれを用いるべきかという研究に費した。真向からの外交交渉によってミサイルの撤去を求めるという可能性は国務省の内部では多少の注意を与えられたけれども、大統領によっては考慮されることがほぼなかったようである。危機の真只中にあっては、非合理な決定がなされることは予期することができる(しかしながら、こうしたことを考えると、心安んじてはいられない)。だが、もっと冷静になってからの時点での、それに対する反応を考えてみよ。わたくしは、多くの論評家は歴史家トマス.A.ベイリーと意見を同じくすることと考える(注:チョムスキーは違う意見であることに注意)。すなわち、ミサイル危機は「ケネディの最もすばらしい刻限(とき)」であって、このとき「彼は冷静さと巧みさをもって核については臆病者としての手をうち(?)、そのことによってピッグス湾の汚点を大いに拭い去った」、というのである。シカゴ大学国際関係委員長モートン.A.カプラン教授は同意して次のように言う、-
キューバのミサイル危機の対処は、ジョン.F.ケネディの輝ける刻限であった。あの危機の対処について彼を口ぎたなく批評する人々は、頭も心も検診してもらう必要がある。殊に、国内政治がケネディの決断に一役を演じたという人に対し、カプランは批判する(彼自身、これはおそらく実情であったと認めるのであるが)-
疑いもなくケネディは選挙を頭に浮かべていた。彼は政治家であった、彼には政権掌握の問題があった、動機は常に複雑であった。
![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
差し当っては、われわれが生存している世界は、他の目的をもっている。しかし、それはみずからの燃えさかる情念の火に焼きつくされ、消え去るであろう。そして、その灰から、新たな希望に充ち、眼には朝の光をたたえ、新しい、いっそう若い世界が立ち現れるであろう。