思想家の評価において念頭におくべきこと


 彼(ミル)の純粋に知的な面での欠陥(欠点)にもかかわらず,その影響力は,非常に大きかったし,また,非常に恩恵をもたらした。彼は合理主義と社会主義を尊敬に値するものにした。もっとも,彼にとっての社会主義は国家権力の増大を伴わない前マルクス主義者のものであった。彼の女性の平等(男女同権)の主張(擁護)は,結局,ほとんど世界中で受け容れられた。彼の『自由論』は今日でも(読まれるべき)古典であり続けている。彼の(自由論の)理論面における(いろいろな)欠点を指摘することは容易であるが,この本の価値は世界が彼の教えから遠のけば遠のくほど(自由が少なくなればなるほど)増大する。現在の世界は彼を驚かし,恐れさせもするだろう(現在の世界の自由の状況を知れば,ミルはきっと驚くであろう)。もし,彼の倫理上の諸原理がもっと尊敬されていたならば,世界は現在よりももっとよいものとなっていたであろう。

In spite of his purely intellectual deficiencies, his influence was very great and very beneficent. He made rationalism and Socialism respectable, though his Socialism was of the pre-Marxist sort which did not involve an increase in the powers of the State. His advocacy of equality for women in the end won almost world-wide acceptance. His book On Liberty remains a classic: although it is easy to point out theoretical defects, its value increases as the world travels farther and farther from his teaching. The present world would both astonish and horrify him; but it would be better than it is, if his ethical principles were more respected.
出典: John Stuart Mill,1955.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1097_JSM-270.HTM

<寸言>
その人の真価は,その人の生きた時代にどう考え、どう行動したかであろう。現代人が過去の偉大な人物を批評する時,もちろん現代の観点に立って批評することは重要であるが、それは当時の観点に立って理解した上でやるべきであろう。そうして,さらにその人物が今生きていたらどのように考え行動したであろうかという観点も必要であろう。

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