J. S. ミルの知的高潔さ(誠実さ)


 ミルは,知性によってではなく,知的美徳(知的な徳性)によって,彼の(生きた)時代に享受した名声に価した。彼はデカルトやヒユームのように偉大な哲学者ではなかった。哲学の領域においては,ヒユームやベンサムや彼の父からその思想を引き出した。しかし,彼は哲学的急進論者のとげとげしさに,最初コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge, 1772-1834:イギリスのロマン派詩人)やカーライルに由来する,その後は自分の妻から得た, 浪浸主義運動的要素を混ぜあわせた。彼は自分の受けついだものをよく融合(吸収消化)することによって合理的なものにした。(若干の)浪漫主義者たちの愚行や暴力行為(注:violences と複数形になっていることに注意)は彼には何ら(強い)印象ももたらさなかった。彼の知的高潔さ(誠実さ)は申し分ないものであった。論争に参加していた時には,最大限繊細かつ良心的な公平さをもって議論を行った。彼の論争が向けられた人たちは,大抵の場合,彼が洗練された言葉で述べた(下した)批判に値していた。

Mill deserved the eminence which he enjoyed in his own day, not by his intellect but by his intellectual virtues. He was not a great philosopher, like Descartes or Hume. In the realm of philosophy, he derived his ideas from Hume and Bentham and his father. But he blended the harshness of the Philosophical Radicals with something of the Romantic Movement, derived first from Coleridge and Carlyle and then from his wife. What he took over, he made rational in assimilating it. The follies and violences of some Romantics made no impression upon him. His intellectual integrity was impeccable. When he engaged in controversy, he did so with the most minutely scrupulous fairness. The people against whom his controversies were directed deserved almost always the urbanely worded strictures which he passed upon them.
出典: John Stuart Mill,1955.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1097_JSM-260.HTM

<寸言>
形骸化した,形式的民主主義に対する抗議。公共の福祉のためという表向きの理由で権力者の意向を通そうとする,個人の自由の制限に対する抗議。

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