「好奇心」は最も重要な知的な美徳

 性格の改善は知育の目的とすべきことではないけれども,成功裏に(上首尾に)知識を追求するために非常に望ましく欠くことのできない性質がいくつかある。それは,知的な美徳(徳目)と呼んでもいいだろう。これらの知的な美徳(徳目)は,知育から生じるはずである。しかし,学習に必要な美徳(徳目)として生じるのであって,徳目のために追求される徳目(美徳のための美徳)として生じるのではない。そういう性質のうち主要なものは,次のようなものであると思われる。即ち,好奇心,偏見のなさ,知識を身につけることは困難だが可能であるという信念,忍耐,勤勉,集中力,精確さ,である。これらのうち,好奇心が(最も)基本的なものである。(つまり)好奇心が強く,正しい対象に向けられた場合には,残りの性質(美徳)はすべておのずと出てくる。

Although improvement of character should not be the aim of instruction, there are certain qualities which are very desirable, and which are essential to the successful pursuit of knowledge ; they may be called the intellectual virtues. These should result from intellectual education ; but they should result as needed in learning, not as virtues pursued for their own sakes. Among such qualities the chief seem to me : curiosity, open-mindedness, belief that knowledge is possible though difficult, patience, industry, concentration, and exactness. Of these, curiosity is fundamental ; where it is strong and directed to the right objects, all the rest will follow.
出典: On Education, especially in early childhood, 1926, Pt. 2:Education of character, chap. 14: General principles
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/OE14-040.HTM

<寸言>
好奇心がなくなったら半分死んだも同然。
年をとるにつれて「子どものような好奇心」をしだいに持てなくなるにしても,よほど不幸な境遇に陥らなければ、死ぬまで好奇心を持ち続けることは可能であろう。
しかし,そんな子どものときにさえ,あまり好奇心をもてなかった人は,おとなになっても周囲に対してあまり好奇心が持てそうもない。
その原因として幼児教育の失敗がかなり影響しているのではないか?