女性によって影響を受けることーオットリン・モレル夫人との恋愛

ottoline オットリン(モレル夫人)は非常に大きな影響を私に与えたが,ほとんどの場合,有益なものであった。・・・。彼女は,私の自己中心的なところや,独善的なところを少なくしてくれた。・・・。彼女は,私の禁欲的(清教徒的)なところをかなりなくし,また他人に対し批判的なところ(人に難癖をつけたがるところ)を,以前よりかなりなくしてくれた。・・・。
女性によって影響を受けることを怖れる男性が多いが,私の経験による限りでは,これはばかげた怖れである。肉体的と同様に精神的にも,男は女を必要とし女は男を必要とする,と私には,思われる。自分のことを言えば,私はかつて愛した女性たちのおかげを非常に受けており,彼女たちがいなければ,私は今よりもずっと狭量な人間になっていたであろう。

Ottoline had a great influence upon me, which was almost wholly beneficial. … She made me less self-centred, and less self-righteous. …
Many men are afraid of being influenced by women, but as far as my experience goes, this is a foolish fear. It seems to me that men need women, and women need men, mentally as much as physically. For my part, I owe a great deal to women whom I have loved, and without them I should have been far more narrow-minded.
出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, chap. 7: Cambridge Again, 1967]
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/AB17-050.HTM

<寸言>
ottoline_seymour_cover-jacket ラッセルは,若い時に5歳年上のアリスと結婚したが,しだいに気持ちが離れていき,結局,結婚生活は失敗に終わり,長い別居期間を経て、離婚に至った。(二人の間に子供がいれば、また違った展開になったであろう。ラッセルは早く両親が病没したことによる孤独感から,子供を持つことを熱望していたが、アリスは子供が産めない身体であり、ラッセルの強い希望も立たれた。)

そのような時にラッセルの孤独感を救ったのは、オットリン・モレル夫人((1873-1938,ラッセルの1歳年下)であった。オットリン(注:ポートランド公爵の義理の妹)のことをラッセルは幼児の頃から知っていたが、ラッセルがオットリンに急速に接近したのは、オットリンの夫が自由党から立候補したのを応援したのがきっかけであった。そうして、二人は恋人同士になった。