例外的特権に依存する安心・安全は’不正’

bonbon_sekensirazu 世の中の大多数の人々に比べて,恒常的により快適な境遇のもとに生きる人々は,通常,自分よりも不幸な人々への同情を感じない。彼らは,時折あからさまに’無感覚’であり,時折,人間の幸福は魂のみにかかわり,物質的福祉とは無関係であるから(正当な)取り分以上の財貨を自分たちが得たとしても貧乏人に実害を及ぼすことにはならないといった’嫌悪感を抱かせる見解‘を採用する。
例外的特権に依存する安心・安全は’不正’であり,それゆえ,自分に都合のよい社会的不正のための口実を見いだそうとする人間は,必ず,’ゆがんだ道義的感覚’を身につけることになる。他方,自由競争の勝者である現代世界の支配者たちは,競争での成功を実現する冷酷さや様々な行為の価値を過大評価する。

Men whose circumstances have always been more comfortable than those of the majority are, as a rule, incapable of sympathy with those who are less fortunate. Sometimes they are frankly callous, sometimes they adopt the more nauseous view that happiness depends upon the soul and is independent of material well-being, so that they are doing no real harm to the poor in taking more than their share of this world’s goods. Security depending upon exceptional privilege is unjust, and the man who has to find excuses for an injustice by which he profits is bound to acquire a distorted moral sense. On the other hand, the powerful men of the present day who are the victors in a free fight overestimate the value of ruthlessness and of the various acts by which success in competition is achieved.
出典: On economic security (written in Dec. 16, 1931 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.]
詳細情報:https://russell-j.com/ESECRITY.HTM

[寸言]
今日の状況を招いた「競争の哲学」(競争至上主義)に対する批判

ロシアの共産主義体制は一度瓦解した。中国の一党独裁もいずれ崩壊するかも知れない。しかし、社会主義体制にもいろいろあり,スウェーデなど北欧の社会主義体制は,米国などの資本主義社会よりも優れている(と思っている人が多い)。

untitled - 31735066248802 世界中の資本主義国家は,大企業を支援するだけでなく,自由競争(市場主義や新自由主義)を金科玉条のように信奉し推進した結果,企業間格差や国民の経済格差は格段に進んでしまった。米国においては1,2%の国民が米国の富の40%を握る状況までなっており、日本は米国ほどの格差はないにしても,世界第2位か第3位の格差国家になってしまっている。(昨日のNHKの資本主義の諸問題に関する特集番組では、国民の経済博はは、米国、英国に続いて第三位だそうですが、第二になるのはそう遠くない将来でしょう。)