バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )
  

 特別に強い欲望を感じていない(ごく普通の欲望のみを感じる)ものを容易に入手できる人は,欲望を達成しても幸福はもたらされない,と結論する。もし,彼が哲学者気質の人であれば,人生は本質的にみじめである,なぜなら,欲しいものは何でも持っている人でも,なお不幸なのだから,と結論する。彼は,欲しいものをいくつか持っていないことこそ,幸福の不可欠の要素の一つである,ということを忘れているのである。

The man who acquires easily things for which he feels only a very moderate desire concludes that the attainment of desire does not bring happiness. If he is of a philosophic disposition, he concludes that human life is essentially wretched, since the man who has all he wants is still unhappy. He forgets that to be without some of the things you want is an indispensable part of happiness.
 出典: The Conquest of Happiness, 1930, chap.2: Byronic unhappiness.
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/HA12-020.HTM

 <寸言>
 今はこういった(たとえばショーペンハウエルのような)厭世主義者はそれほどいなくて,どこまでも欲望や権力を追い求める人間のほうが多いかもしれません。あるいは,日々の生活に苦労している人たちに比べれば,自分はずっと幸福だと自分に言い聞かせて,幸せ(人生の充実感)を実感できない自分をいましている人も少なくないかも知れません。  いずれにしても,他人と比較することによって,幸福に感じたり不幸に感じたりするのは,おかしな話。
 自分に欠けているもの,簡単に手に入れられないものを手に入れようと,一生を通じて継続的に努力することが「できる」ことは,幸福のための重要な要素の一つですので,ラッセルの言うように「欲しいものをいくつかもっていないことは,幸福の不可欠の要素の一つ」だと思われます。