バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 19世紀自由主義のスローガン(合言葉)であった自由競争は,疑いもなく支持すべき多くの長所を持っていた。'自由競争'は諸国民の富を増大させ,手工業から機械工業への移行を加速した。即ち,人為的不正を取り除き,'才能のある者にキャリア形成の道を開くというナポレオンの理想を実現した。しかしそれは一つの大きな不公平 -即ち才能の不平等性にもとづく大きな不公平を救済しなかった。自由競争の世界では,精力的で抜け目のない人間は裕福になり,他方その人の長所が競争的でない種類のものである者は貧乏のままとなる。 

Free competition, which was the watchword of nineteenth-century liberalism, had undoubtedly much to be said in its favour. It increased the wealth of the nations, and it accelerated the transition from handicrafts to machine industry; it tended to remove artificial injustice and realised Napoleon's ideal of opening careers to talent. It left, however, one great injustice unremedied - the injustice due to unequal talents. In a world of free competition the man whom Nature has made energetic and astute grows rich, while the man whose merits are of a less competitive kind remains poor.
 出典:Success and failure (written in Jan. 11, 1932 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.
 詳細情報:http://russell-j.com/JIYU-KYO.HTM

 <寸言>
 「自由」も「平等」も単独のスローガンとして使用すると,弊害が多い。資本主義社会は「自由」を,社会主義社会は「平等」をより価値の高いものと考える。現在は資本主義社会が優勢となっているが,決して満足のいく社会ではない。
 米国あるいは先進国中心でない,新しい(人類共通の)世界観・価値観を作り出せない限り,人類の未来は明るいとはいえない。新しい至福の千年が到来するか,それとも反省のない人類の終末の始まりか。