私は最初に理性に訴える方法を試みた。即ち,核兵器の危険をペスト(黒死病)に比較した。誰しもが「まったくそのとおりだ!」と言った。しかし誰も何もしなかった。特定の集団に注意喚起をしてみた。その成果は限定的ではあれあったが,社会一般や各国政府に対してはほとんど効果はなかった。次に私は,大規模なデモ行進による大衆アピールを試みた。皆がこう言った。「このようなデモ行進は迷惑千万だ!」。・・・。
しかし,人類が自らを保存する価値があると考えるかどうかは,依然として疑問のままである。
I tried first the method of reason: I compared the danger of nuclear weapons with the danger of the Black Death. Everybody said, 'How true,' and did nothing. I tried alerting a particular group, but though this had a limited success, it had little effect on the general public or Governments. I next tried the popular appeal of marches of large numbers. Everybody said, 'These marchers are a nuisance'..
But whether mankind will think itself worth preserving remains a doubtful question.
出典:The Autobiography of Bertrand Russell, v.3:1944-1969, chap.4: The Foundation
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB34-010.HTM
<寸言>
「確信過剰(cocksure)」な人間の多い政治の世界。自らの愚かさに「確信」を持ってもらいたいところだが・・・。
平和は「核(兵器)のバランス」の上に保たれていると主張してきた米ソやそれぞれの追従国(含む、日本)の指導者たち。
しかし、同盟国が核兵器を持つとダメとは言えず、保有を宣言しない国(イスラエル)を含めれば9ケ国になってしまった。第二次世界大戦の戦勝国(いわゆる五大国)は全て核兵器を保有している。それだけにとどまらず、インド、パキスタン、北朝鮮及びイスラエルまでが現在保有している。
つまり、同盟国側が核を保有するのは仕方がないが,敵国側が持つのは絶対認められないという態度を貫いている。
米国では、自分や自分の家族の命を守るという理由で、国民の多くが銃(ライフルなど)を保有している。其の結果はどういうことになっているか(1年に銃が原因で死亡する人間の数がどれだけ多いかは、世界に知られている。)銃があるからこそ自分たちの命を守ることができていると思っている米国民。それと同じ論理で、核兵器を地球上の大部分の国が持つようになったらどうなるかはわかりきったことだと思うが・・・?
テロリストが核兵器を奪って所有して始めて、人間の愚かさが実感されるのかも知れない。