三浦俊彦による書評

★ 梶原しげる『口のきき方』(新潮新書)

* 出典:『読売新聞』2003年12月14日掲載


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 「料金はこちらになります」「ご注文のほうを繰り返させていただきます」のような定番から「自分へのご褒美」「サービス残業」といった準定型句、各種の省略語に至るまで、変な言葉遣いをアナウンサー兼カウンセラーの立場からバシバシ指摘。いやもう、笑える。
 どの時代にも「最近の言葉の乱れ」が論じられてきたには違いない。本書もその線上にありながら、イチローを怒らせた不用意なインタビュー、新幹線の車内放送、中高生の意識調査の歪曲された統計、など多彩な事例が、全時代にあてはまる普遍的な言語論を語っている。
 若者言葉をたくさん使う人は、そうでない人に比べて自己主張能力が高い、という意外な分析結果も楽しい。軽快な文体で深遠な批評を繰り広げる本書そのものの地の文にすら、「バブル時代に青春を謳歌し……」といった常套句が多々忍び込むのはご愛嬌。言葉を自覚することの難しさと滑稽さを、温泉にでも漬かるように体感させてもらった。

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