< 三浦俊彦による書評:スティーブン・ロー『フィロソフィー・ジム』(三浦俊彦の時空)
      

三浦俊彦による書評

★ スティーブン・ロー『フィロソフィー・ジム』(ランダムハウス講談社)

* 出典:『読売新聞』2004年2月22日掲載

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 便利な本だ。十九の短い章それぞれに、標準的な哲学の教科書一冊分の内容がつまっているのだから。謎の提示、論証、結論、再考の余韻と、哲学のプロセスを無駄なく踏んでいる。
 主題がまた堅実。現代哲学のホットな話題がすべて網羅されている。「意識」「遺伝子操作」「考える機械」「道徳の客観性」「決定論と自由」「人格の同一性」など、軽快な対話形式でぐいぐい引っ張る。実際に哲学界でなされた論争をシミュレーションしているのだが、人名でなくあくまでトピック本位の造りなのは、教養趣味より「考える脳」を標的にしているからだろう。
 全章が「初級」「中級」「上級」に分類されているのも愉快だ。「意識とは何か」「知識とは何か」が上級なのに「芸術とは何か」「宇宙の原因は何か」が初級なのはどうしてだろう。などと本書の難易度分類の基準について考えることで、もう一回哲学ができそう。いろんな楽しみ方を誘う、哲学入門の超高能率バージョン。

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