アドホック日記(2002年3月10日)- 『サプリメント戦争』

  
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 さァて、『サプリメント戦争』刊行からたっぷり4ヶ月経ったか。
 まだ平積みにしてくれてる書店もたまーにあって気分は悪くないが、しかし著者インタビューとかきたら大いに語ろうと思っていたのにほとんどオファーがなかったな。
 そのわりには、「評判になりましたね」とか「書評がいっぱい出ましたね」とか何度か人に言われた。おかしいな。書評といったら私が気づいたところで一つしか出てないぞ。言及記事も二個くらいしか見てないし。
 というか、贈呈した近隣の人々も大半が「なんか、読みづらそう」とかってなかなか読んでくれないんですよ。
 読みづらそうに見えても絶対、面白いって。
 5冊分くらいの所蔵ネタと実話をぶち込んでるから。こういうのも文筆専業ではない、小出しの必要性ない身分だからできる贅沢かな。
 けど硬そうで詰まってそうな本てのはなかなか読まれなくなってきてるよな。
 反応薄いとこっちが語り返す機会もないから、せっかくの仕掛け群を忘れてしまう。わが脳が次のパラドクス本モードになっていることもあり。『エクリチュール元年』とかも、語らぬままずっと来たら、著者本人も秘密成分をおおかた忘れてしまったよ。読み返せば思い出すだろうが。
 『サプリメント戦争』のメカ、忘れる前に全部ここに書きとめる手もあるが俗っぽい姿勢はナシにしよう。そのかわり「これから読む人」「これから読み直す人」のために、ディテール省いて基礎的ポイントのみメモさせていただく。

 ● サプリメントにのみ名があり、人間にはほとんど名がないことに注目。
 ◆人間の中でも、メインには名がなく、脇役(サプリメント)の幾人かのみに名があることに注目。
 ■成分が列挙されるところは飛ばして読みたくなるだろうことに注目。
 ▼実際に飛ばして地の文だけ拾って読んでいくと、時々意味がわからないところが出てきて、きっと飛ばした成分の隙間にこれ関係のことが書いてあったんだな、と気づいたりするだろうことに注目。
 ▲そういうときは一応まじめに、もどって成分のところも目を通してみる、と。
 ●だけどやっぱり一々成分を読んでいくのはしんどいので、時々ついつい飛ばしながら、あ、いけねと元に戻って読み直したりしなければならないその振動に注目。
 ◆そういう振幅運動は、小説の読み方とは違うことに注目。
 ◆とはいえ、詩の読み方とも違うしましてやエッセイの読み方とも全然違うことに注目。
 ■新種の読書モードかもしれないことに注目。
 ▼つまり小説の形をとってはいるが新しいジャンルの文芸であるということに注目。
 ▲最後に全体、効能書きの正体を名乗る以上、この本自体が「人生の成分」であることに注目。
 ●とはいえ、小説であることにはやはり違いないことに注目。小説は元来、アートであるという原則を想起。
 ◆第4章の問題はぜひ解いてください。
 ■時間の経過に注目。サプリメントの傾向がほとんど経年変化せぬのに注目。
 ▲作者は日本文化礼賛者ではないが、専文店をめぐるうちに日本語ってなんと多彩な言語かと誇らしくなってしまうのが正しいかどうかに注目。
 ▼本当のテーマは「愛」のつもりだったことに注目。
 ●二層の愛であることに注目。
 ◆成分名に牛骨粉などがさかんに登場してるが、狂牛病騒ぎを境にだいぶ入れ替わってしまったことに薬局等で注目。
 ■文学の言語って、効くようで無くてもいいようで、つくづく言語界のサプリメントだなァって仕掛けに注目。

 というような感じですけどね。