大学図書館と情報公開(11.10.20)

1.大学図書館にとっての情報公開

 行政機関が保有する情報を公開するという場合、通常は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第二条第3項でいう「行政文書」(=行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録)の公開のことをいい、同法律第二条第2項の一にあるように、「官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」は除いて考えられる。従って情報公開を狭義にとらえれば、図書館がこの問題についてコメントすることはほとんどないと言える。
 しかし、情報の公開の問題を広義にとらえれば、教育研究支援のために収集した図書館資料(電子媒体のもの、非売品の印刷資料も含む)及びそれらに関するデータの公開も含めることもできると思われる。
 また、公開という場合、(1)従来非公開であったものを公開するという側面と、従来から公開されてはいるがデータの整備が遅れていたり、検索手段が不十分であったりして、どのような情報資料をその機関が保有しているかよくわからないために、結果として「公開」しているとは言い難いものを、(2)データ整備及びアクセス手段の改善等を図り、利用しやすい形になおして「公開」するという側面の、2つの側面があると思われる。  大学図書館の場合、(1)については、「プライバシーの保護」の問題も含め、他部局と特に異なる事情はないと思われる。しかし、(2)についてはこれまで努力を続けてきたところではあるが、予算及び人的な問題が大きく、いまだ不十分な状況にあり、今後もよりいっそうの努力が必要である。

2.大学図書館における情報公開の促進

 琉球大学は、発足当時から地域に開かれた大学を目指しており、附属図書館も当初から市民に公開されていて、他大学に比べて一般市民の利用がかなり多い。
 大学図書館においては、上記(2)の側面から情報公開の問題を考えると、収集した資料に関するデータベースの整備や検索システムの充実とともに、資料そのものの電子化、電子媒体を活用しての利用案内や広報の改善等が重要となる。そこで琉球大学附属図書館では近年、以下のような努力を行っている。

 1) 遡及入力事業の実施によるオンライン蔵書目録データベースの整備
   新刊図書・雑誌等は日常的に目録データの整備が行われているが、1986年以前に受け入れた古い蔵書については整備が未だ不十分なため、平成8年度から、10ケ年計画で蔵書目録データの遡及入力事業を実施している。

 2) オンライン蔵書目録データベース検索システム(OPAC)の改善
   データの整備が進んだとしても、そのデータベースを検索するためのシステムが使いづらいようでは、データベースの価値が下がってしまう。残念ながら琉球大学の現行のオンライン蔵書目録データベース検索システム(OPAC)は使いづらいものであり、長い間改善が利用者から期待されてきた。しかし、OPACについては、来年2月に予定されている附属図書館電子計算機のリプレースによってWeb対応のものとなり、図書館のホームページ上で簡単に蔵書の検索ができるものとなる予定である。もちろん、インターネット対応であるため、全世界から利用可能である。

3) 資料の電子化の促進
 検索手段の電子化等による改善とともに、図書館所蔵資料そのものの電子化が重要である。特に資料の保存の観点から利用制限のある貴重書や沖縄県以外ではあまり利用できない沖縄関係資料の電子化を実施することにより、「公開」が一層促進されることになる。

 4) Webのホームページを活用した利用案内・広報の充実
   「情報公開」の観点から考えると、Webのホームページを活用した利用案内・広報の充実は、大変重要である。インターネットの利用環境は1年ごとに急速に改善されつつあり、一般市民にとって、ホームページは、それぞれの機関の情報「公開度」を判断できる最も有益な媒体である。

大学図書館で収集するものはできる限り公開することが原則ではあるが、購入したCD-ROMデータベース等、契約の関係で、一般公開できないものもあることはふれておかなけらばならない。CD-ROM等、市販のデータベースは、利用対象者数や範囲によって購入価格がかなり違ってくる。学内だけの利用であっても、たとえば海外から導入したデータベースなどはかなり高額であり、同時アクセス(可能)数にも制限がある。学外に対しても利用させるということになると、購入価格は5倍、10倍ということになる場合が多く、それでは導入自体も不可能となってしまう。

3.学術情報基盤整備による情報発信機能の強化

近年、大学における情報発信機能の強化が叫ばれているが、そのためには学内の情報基盤(インフラ)や学術情報データベースの整備が重要となる。大学図書館は、計算機センターとともに情報インフラの整備や情報提供機能の強化において大きな役割を果たすことができると思われる。附属図書館としてもそれらの努力を通して、今後ますます情報公開の促進につとめたい。