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「核廃絶、署名運動を-湯川博士夫妻が呼びかけ(『朝日新聞』1980年11月20日付)



 五年余の闘病生活から立ち直ったノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹さん(73)と夫人のスミさん(70)(=京都市左京区下鴨泉川町)は十九日、核兵器全廃を呼びかける署名運動に乗り出すことを明らかにした。レーガン次期米国大統領のタカ派的体質をめぐって気遣われている国際危機を、世論の盛り上がりで食い止めたい、としている。
 夫妻は、世界連邦の世界協会の名誉会長と副会長で、長年にわたって世界平和の活動を続けている。発表によると、国内にある(世界連邦世界協会の)百二十五支部を通じて年内に署名を集め、これを添えて来年一月、日本政府に働きかけるのをはじめ、国際的な運動への発展をめざす。
 署名の趣意書は、(1)世界にはいま、広島に投下された原爆の数万倍の威力を持つ核兵器があり、このままだと人類が滅亡する恐れがある。生き残るためには核兵器の全廃が必要だ、(2)今後も日本が核武装しないため世論を盛り上げる、(3)まず日本から運動の輪を広げていく--としている。
 湯川さんは昭和五十年五月に前立腺腫瘍で倒れ、二度の手術を受けた。また今年一月にかけて心不全と急性肺炎で入院した。現在も腫瘍の薬物療法を続けているが、治癒の目安である五年を過ぎ、元気さを取り戻しつつある。