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「パグウォッシュ京都会議開く、完全核軍縮求めて科学者ら36人が参加
『朝日新聞』1975年8月28日付掲載

* 湯川秀樹「パクウオッシュ会議を目前にして」

 国家や信条のわくを越え、完全核軍縮への道を模索する科学者の国際会議、第25回パグウォッシュ・シンポジウムが28日朝、京都市左京区宝池の国立京都国際会館で開幕した。全面核戦争による人類滅亡の危機が高まる中で、18年前にカナダのパグウォッシュ村で誕生したこの会議だが、わけても広島、長崎への原爆投下、米水爆実験による第5福竜丸の「死の灰」の被爆と、世界に例のない核体験をした日本での開催だけに、内外で成果が期待されている。
 午前9時半、比較的コンパクトなルームDで開会式が始まった。これまで数々のマンモス学界やシンポジウムが開かれてきたこの会館だが、垂れ幕も楽器演奏などのアトラクションもない。核を真剣に考える世界の頭脳、36人の参加というこのシンポジウムにはそれが、かえってふさわしい。前立腺肥大症のため入院、2回にわたる手術でやつれ気味の湯川秀樹京大名誉教授が組織委員として、スミ夫人に付き添われ、車イスに乗って入場。事務局長の豊田利幸名古屋大学教授が湯川氏の病状など、経過を説明した。湯川氏はハリのある声で、英語で開会のあいさつ。「健康の回復が十分でなく、シンポジウムに参加できず残念だが、日本のパグウォッシュの代表として、海外からのみなさんに歓迎の辞を述べるのが義務だと思ってここにまいりました。」と前置きしたあと、「核抑止という考え方こそが核軍縮をさまたげている最大の障害である。この考えは超大国の核の拡散を無限に招いている。また、核軍備をする国も増えている。私のビジョンとしては、人類の全面核軍縮と究極的にはすべての国が軍備がなくても安全を保障される世界的機構の確立が必要だということだ。この点に関して、私はラッセル、アインシュタイン両博士のいった世界連邦の考え方に全く賛同するものだ。20年前のラッセル=アインシュタイン宣言の精神に帰ることが必要だ。核兵器は人類共通の敵であり、これを地球上からなくすのがわれわれの最終目的である。この会議で具体的な提案がなされることを切望します。」と話した。
 このあとラッセル=アインシュタイン宣言の最初の署名者としては、湯川氏とともに世界でわずか2人の生存者となったロートブラット・ロンドン大学教授(パグウオッシュ会議議長代行)があいさつ、豊田利幸事務局長が経過報告したあと閉会、さっそくシンポジウムに移った。今回は、「完全核軍縮への新しい構想−科学者および技術者の社会的機能」をメインテーマに、9月1日までの5日間、核拡散、核不使用条約、完全核軍縮への段階など、重要な問題が連日約6時間程度話し合われ、最終日にコミュニケが発表される。
 参加者は次の通り。(敬称略。海外はアルファベット順、国内は50音順)
[海外]
ブラウ(社会学)=オーストリア/タビドン(物理学)=アメリカ/エメリアノフ(物理学)=ソ連/エプシュタイン(軍縮)=カナダ/フォーク(政治学)=アメリカ/ガラール(薬理学)=エジプト/ヤノフ(物理学)=スウェーデン/カムスコム(?)=カメルーン/クレーガー(国際法)=東ドイツ/クレショフ(?)=ソ連/モーレ(分子生物学)=デンマーク/マホーズ(?)=エジプトマルコフ(物理学)=ソ連/モック(軍縮)=フランス/オコイエ(物理学)=ナイジェリア/オフセン(物理学)=ノルウェー/パブリチェンコ(軍備管理)=ソ連/ラシェンス(政治学)=アメリカ/ロートブラット(物理学)=イギリス/ゼンハース(政治学)=西ドイツ/スブラマニアム(安全保障)=インド/トルホク(物理学)=オランダ/ヨーク(物理学)=アメリカ/カプラン(微生物学)=世界保健機構/ツイピス(物理学)=ストックホルム国際平和問題研究所

[国内]
飯島宗一(広島大学学長)/小川岩雄(立教大学教授)/坂本義和(東大教授)/関寛治(東大教授)/朝永慎一郎(東京教育大学教授)/豊田利幸(名古屋大学教授)/西川順(早稲田大学助教授)/野上茂吉郎(法政大学教授)/山田英二(金沢大学教授)/湯川秀樹(京大名誉教授)/渡部経彦(大阪大学教授)