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バートランド・ラッセル(著)『教育と社会体制』- 邦訳者による明治図書版へのノート

* 出典:バートランド・ラッセル(著),鈴木祥蔵(訳)『教育と社会体制』(黎明書房,1952年/明治図書,1960年9月。226pp. 世界教育学選集第8巻)
* 原著:Education and the Social Order, 1932.

 邦訳者から(明治図書版へのノート)

 この書は、バートランド・ラッセルの著書 Education and the Social Order (London; Geroge Allen & Unwin Ltd., 1932. 254pp.)の翻訳である。この書は同年アメリカでも、Education and the Modern Worldという書名で出版され、多大の反響を呼んだ(松下注:米国版も、高瀬書房から、邦訳が1932年2月という非常に早い時期に出されている。)。アメリカで出版された「教育と現代世界」の方には、原著にある第2、第3、第4、第5の各章がはぶかれている。それは、現代の世界中の国々が解決をせまられているより政治的な諸問題に直接関係深い諸課題だけに焦点をしぼるためであったと思われる。
 わたくしは、1952年にこの書を翻訳出版したのだが(松下注:名古屋の黎明書房刊)今回この書を『世界教育学選集』に入れるに当って、全面的に手を入れて、原著に忠実であることを心がけた。
 ラッセルの文章は明快で且つ優雅である。アラン・ドーワードがいっているように、わかりにくいまがりくねった文章でしか表現できない数多くの哲学者の文体で困惑させられたあとで、ラッセルの流麗な文章を読むことは大きなよろこびである。
 この美しい文章を美しい日本語に訳しなおすことが十分にできなかったことを原著者と読者とにわびなければならないのは、まことに残念である。
 けれども、この訳書を通してラッセルの透徹した洞察と、世界平和への強い熱意を読みとることはできるであろう。