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牧野力(編)『ラッセル思想辞典』より

性的好奇心

(From: On Education, 1926, pt.2, chap.12.)


 子供は普通、三、四歳で、成人男女と自分との生理的相違に気付き、性的好奇心を示す。一般に好奇心は、隠されずに満たされると、消え去るものだから、裸体の両親や兄や姉を眺めさせてもよい。子供の注目は成人が抱く心情とは全く違うのだから、大騒ぎすべきでない。
 子供の性の質問には、性以外の月や電車についての質問の場合と同様に、十分かつ自然に答えねばならぬ。(イ)常に隠さずに答える、(ロ)性を他の知識同様、正確に扱う、の二点に徹底することが幼児教育の上から重要となる。「そんなことを聞くもんじゃない!」と顔をあからめて、どぎつく答えると、その語気やその時の雰囲気から、子供を好色と猥褻の世界へ追いやることになる。成人して味わう性生活の本能的な幸福の感情すら傷つけてしまう。
 弟や妹が生れる前に、母親の身体の中で、弟や妹が成長しているのを教え、母の乳房を吸う姿を見せ、自分もそうだったことを感得させ、自然に、科学的な精神で話せば、思春期以前の性教育を受容しやすい。
 両親か先生から答えてもらう前に遊び友達から、性を猥褻な冗談の話題にしていると、性を滑稽で不潔なものと考え、自分の性交にすら不健全な見方をし、母親すら尊敬しなくなる。これほど、男と女、親と子の関係を毒することはない。 (挿絵:ラッセルの Marriage and Morals(1929)に対するアメリカ人の反応の一例: From B. Russell and His World, by R. Clark, 1981, p.79.)