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バートランド・ラッセル 権力 第10条 (松下彰良 訳)- Power, 1938, by Bertrand Russell

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第11章 組織体の生物学 n.2 - 組織と統治機関


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 権力は主として組織に依存しているが,しかし全てがそうであるわけではない。(たとえば)プラトンやガリレオの権力のような,純粋に心理的な権力はそれに対応するいかなる社会制度や社会組織(social institution)も存在しないかも知れない。しかし,一般的に,そのような権力も,教会や政党,あるいは何らかの類似した社会的組織(体)が宣伝してくれなくては重要なものではない(社会的に重要性をもたない)。今のところ,組織(体)と関連をもたない権力は無視することにしよう。
 組織体とは,共通の目的に向けられた活動のために結びついた人々(人間)の集合である。それは,クラブのように,純粋に自発的な集団かも知れない。家族とか一族(clan)のように,自然な生物学的集団であるかも知れない。国家のように,強制的な集団かも知れない。あるいは,鉄道会社のように,複雑に混じり合った集団かも知れない。当該組織(体)の目的は明示されているかもしれないし,明示されていないかも知れないし,また,意識的なものかも知れないし,無意識的なものかも知れない。軍事的なものかも知れないし,あるいは,政治的,経済的,宗教的なものかも知れないし,あるいは,教育的なものや美的なものかも知れないし,その他かも知れない,といった具合である。およそ組織体というものは(あらゆる組織体は),その性格がどのようなものであれ,またその目的がどのようなものであれ,権力のいくらかの再配分を伴わないものはない。そこには(組織体には)統治組織が存在しなければならず,その統治組織は全体の名においていろいろな決断(決定)を行い,組織のいかなるメンバーよりも -少なくともその組織が存在する目的に関しては- より大きな権力をもっている(注:東宮訳では「そこにはまた政治もなくてはならない。この政治は・・・,全体の名で決済を行うものである」となっている。「政治が決済を行う」というのはおかしいと東宮氏は思わなかったのか? ちなみに、"a government" と定冠詞の a がついていることに注意!)。人々が次第に文明化し,技術がより複雑になるに従って,結合(連合体)の有利な点(強み)はますます明らかになる。しかし,結合には,常に,いくらかの自立の放棄が伴う(自立を放棄することが必要となる)。(即ち)我々は他人(他者)を支配する権力を獲得するかもしれないが,他人(他者)もまた我々を支配する権力を獲得する。しだいに,重要な決定は,個々の個人によるものではなく,集団によるものとなってゆく。そして人間集団の行う決定は,そのメンバーがごく少数だというのでないかぎり,統治組織(through governments 複数形になっていることに注意。従って,「政治」という意味ではない。)を通してなされなければならない。このようにして,現代の文明社会の生活においては,産業革命以前の生活においてよりも,必然的に統治組織がずっと大きな役割を演じている。

Chapter XI: The Biology of Organizations, n.2

Power is dependent upon organization in the main, but not wholly. Purely psychological power, such as that of Plato or Galileo, may exist without any corresponding social institution. But as a rule even such power is not important unless it is propagated by a Church, a political party, or some analogous social organism. For the present, I shall ignore power which is not connected with an organization.

An organization is a set of people who are combined in virtue of activities directed to common ends. It may be purely voluntary, like a club; it may be a natural biological group, like a family or a clan; it may be compulsory, like a State; or it may be a complicated mixture, like a railway company. The purpose of the organization may be explicit or unexpressed, conscious or unconscious; it may be military or political, economic or religious, educational or athletic, and so on. Every organization, whatever its character and whatever its purpose, involves some redistribution of power. There must be a government, which takes decisions in the name of the whole body, and has more power than the single members have, at any rate as regards the purposes for which the organization exists. As men grow more civilized and technique grows more complicated, the advantages of combination become increasingly evident. But combination always involves some surrender of indenendence : we may acquire increased power over others, but they also acquire power over us. More and more, the important decisions are those of bodies of men, not of single individuals. And the decisions of bodies of men, unless the members are very few, have to be effected through governments. Thus government necessarily plays a much larger part in the life of a modern civilized community than in that of pre-industrial societies.
(掲載日:2017.10.31 /更新日: )