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バートランド・ラッセル『権力』(松下彰良・対訳)

* 原著:Power; a new social analysis, by Bertrand Russell (London; George Allen & Unwin, 1938)

総目次

第10章 権力の源泉としての信条 イントロ累積版

  1. 一つの社会(共同体)のもつ権力は、その社会の構成員の数や経済的資源や技術的能力(技術力)に依存するだけでなく、その社会(共同体)のもつ信条にも依存する。

  2. 狂信主義による権力(獲得)の古典的な例は,イスラム教(回教)の勃興である。

  3. 瞬く間に -(イスラム教以外の)他の偉大な宗教(注:キリスト教や仏教など)の初期の頃よりも速やかに- 狂信主義は,政治(統治)からその王座を追われた(狂信的要素は取り除かれた)。

  4. 狂信主義が一見成功したように見えるもう一つの事例は,クロムウェルの下の独立派の勝利である。

  5. 狂信主義が一時的であっても成功をもたらした事例よりも,災難しかもたらさなかった事例のほうがはるかに多い。

  6. 私が(今)問おうとしている疑問は,次のように広義のもの(疑問)ではない。

  7. この問題で真理に達するのには,(次の)二つの対立する公理(truisms 自明の理)の間に妥協点を見つけ出すことが必要である。

  8. (個々の)国家(a nation 民族国家)や宗教や政党に力(権力)を与えるのに必要な一様性(一律性)は,行為(行動/実践)における一様性(一律性)であり,それは感情と習慣に依存している。

  9. さて第二の公理(自明の理)をとりあげてみよう。

  10. 戦争が起こると(始まると),(政府の)隠蔽政策は,(当初)意図した効果とはまったく逆の効果を生むことになるかもしれない。

  11. 我々は今や(これまでに述べた)2つの公理(自明の理)を実際的(実践的に)に総合してもよいであろう。

  12. (それならば)国家の威信を維持するためにはどの程度まで自由に干渉することが必要であろうか?
  13.  (以上述べたことを)要約してみよう。

  14. 以上の議論全体を通して,我々は,狂信的な信条のより直接的な効果についてのみ考察してきた。

  15. 興奮を生み出すためにいろいろな宣伝方法が利用されればされるほど,それに対する反動はそれだけより大きくなり,終には静かな生活(平穏な人生)のみが価値を持つ(それ以外価値がない)と思われるようになる。
第11章 組織体の生物学