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牧野力(編)『ラッセル思想辞典』より


競争原理の公害性

(From: New Hopes for a Changing World, pt.I, chap.2)


 競争を望ましいと初めは信奉していた人々も、やがて競争をある限度内に止めておくべきだと考え直し、使用人(被雇用者)同士の間の競争を限定し、法律の許す範囲内だけに止めよと改めた。
 だが、この制限は撤廃され、階級間の競争(階級闘争)社会主義を生み、国家間の競争も始まり、戦争になった、社会主義も戦争も、信条が生んだ結果だが、信奉者には全く予想外の事だった。万人に豊かな生活を保障するはずの近代技術の競争が、人間への恐るべき災害を生んだ。
 機械工業生産の発達に伴い、古い生存競争的世界観は適用性を失い、その害が増大した。
 今や世界観を技術的な次元に見合ったものへと変えねばならない、と繰返し訴えたい。今や競争ではなく、広範囲、かつ大規模な協力によってこそ、従来よりも遙かに大きな利益がもたらされるからである。戦争と党派的分裂によって、被害は増大する。人類は昔の競争の習慣やその僅かな利益の夢が忘れられず、今日の泥沼におちた。二回の大戦もその実例であった。東西に対立感情があり、互いに背後にピストルを握っていれば、どちらが先に発砲するのかと疑うことしか考えられず、協力どころでなくなる。
 東西の対立は、何ら外的な自然的原因からではなく、古い人間の喧嘩好きな原始衝動の延長にすぎない。考え方の変革がまず必要である。