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バートランド・ラッセル「自由と統制」

* 出典:From: Political Ideals, 1917, chap.1
牧野力(編)『ラッセル思想辞典』より


 どの集団も強い団体(団結)意識(たとえば、国家、同業者団体、宗教団体等への所属意識)がある場合は、自由を求める気持ちから、外部世界にとって重要でない、集団内だけの問題は全て自主的に決定したいという、「自由への強い要求」があります。・・・。自由は自治を要求しますが、他人(や他の集団)の自由を妨害する権利までを要求することはできません。自由と統制との宥和をはかることは困難な問題ですが、いかなる政治理論も避けて通れない問題です。
 統治の本質は、権力掌握者が望ましいと考える目的を達成するために、法律に依拠して実力行使をすることにあります。実力行使による強制は、本質的には常に有害ですが、もし統制がなくなるとしても、人間(あるいは集団・国家)相互の間での実力行使がなくなるわけではありません。・・・。これは、世界政府が現在存在しないために起こっている、今日の世界状勢であります。国家間に無政府状態が存在する結果は、無政府主義が世の中の悪の解決に何の役にも立たないことを、私たちに十分説得してくれるでしょう。
 民主主義は、統制と自由との衝突をできるだけ減らそうと今まで工夫された中で、最良の考え・工夫であります。もし国民の意見が二つに分裂した時でも、民主主義は理論的には、票決により過半数の人々が自分たちの主張を通すのを保障してくれます。しかし、もしも民主主義が組織集団の構成員に大幅の権限委譲を行わなければ、民主主義も適切な工夫であるとは全く言えないものとなります。
(注:挿絵は、B. Russell's The Good Citizen's Alphabet, 1953 より。)
Democracy is a device - the best so far invented - for diminishing as much as possible the interference of governments with liberty. If a nation is divided into two sections which cannot both have their way, domocracy theoretically insures that the majority shall have their way. But democracy is not at all an adequate device unless it is accompanied by a very great amount of devolution.