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バートランド・ラッセル「(不公平の償いのための)神の存在証明法」

ラッセル思想辞典』より

* From: Why I am not a Christian, 1927.

 (第一原因による神の存在証明法以外にも、神の存在を証明しようとするいろいろな試みがある。「不公平の償いのための神の存在証明法」というのもその一つである。)

 この世には大きな不公平があり、しばしば善人が苦しみ、悪人が栄える。それゆえ、この世における人生の(幸不幸の)差額を償うための来世を想像する必要がある。そこで、神がなければならず、正義が行われるためには、地獄と天国がなければならない。・・・。これは極めて奇妙な神の存在証明法です。
 科学的者だったら次のように言うでしょう。
「この世の中では、多くの不公平を発見する。その点に関する限り、正義はこの世を支配していないと想像する理由となる。だから、その限りでは、神の存在のためと言うよりは、神の存在を否定する証明とすることができるだろう。」
 もちろん、私が皆さんに紹介しているこれらの知的な証明法のたぐいは、実際、人々を感動させるものではないことは承知しています。実際に神を信じるように、人々を動かすのは、どんな知的な証明法でもありません。大抵の人々が神を信じるのは、子供の頃から信じるように教わっているからであり、それが主な理由です。(写真は、ラッセルとシュバイツアー)

... What really moves people to believe in God is not any intellectual argument at all. Most people believe in God because they have been taught from early infancy to do it, and that is the main reason.