バートランド・ラッセル「アインシュタイン」
* 原著:Unpopular Essays, 1950 + Dear Bertrand Russell, 1969* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典』
最高の科学者は、優れた知性と子供のような単純さとの結合から生れる(ところの)特別な種類の感銘を人に与えるものだ。この「単純さ」は、利口さが欠けるという意味ではない。私が言いたいのは、ある意見や行動が世間的にどんな利益があるか・不利益があるか、といったことを顧慮することなしに、非個人的に思考する(自己中心的な考え方をしない)習慣のことである。私の知り合った科学者の中でこの種の特質を最高度に示している良い例は、アインシュタインである。
(写真:ラッセルとアインシュタイン/『ラッセル思想辞典』の方は要旨訳なので少し文章は違っています。)
* 出典: Unpopular Essays, 1950
Men of science, at their best, have a special kind of impressiveness, resulting from the combination of great intellect with childlike simplicity. When I say 'simplicity', I do not mean anything involving lack of cleverness; I mean the habit of thinking impersonally, without regard for the worldly advantage or disadvantage of an opinion or an action. Among the men of science I have known, Einstein is a supreme example of this quality.
(ある人からの手紙への返信)
・・・。私のアインシュタインとの交際(経験)は、熱情的かつ全く暖かいものでした。神秘的あるいは直感的に宇宙の秩序を感じとる彼の感覚は、私には到底共有できないものでしたが、人間の経験において何が重要かという評価では二人の見解はかなり接近していました。また私は、人間の知性で探求できる客観的真理が存在すること、そして、この真理を追求する劇的な出来事(ドラマ)が人間の努力の中で最も高貴なものだという彼の考え方に賛成です。・・・。
My experience with Albert Einstein was an intense and entirely warm one. His sense of a mystic or intuitive order in the universe was not one I could entirely share, although our estimates of what is important in human experience were close indeed. I certainly agree with him that there is objective truth ascertainable to human intelligence , and that the drama of seeking this is the noblest endeavour available to men.
* 出典: Dear Bertrand Russell, 1969