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バートランド・ラッセル「批判精神を育てる民主主義」

* 原著:What is Democracy? 1953
* 出典:牧野力(編)『ラッセル思想辞典


 真の民主主義が強力に実践されている国には政党政治が盛んである。(当然のことながら)選挙において,投票者の半数以下は野党支持に,半数以上は与党支持となる。そして,野党は与党を悪党と批判する。一党独裁国や絶対君主国には見られない光景であるが,この批判精神が権力悪防止上有効かつ必要なのである。
 政治に力を入れ過ぎ,また崇拝するのは,偶像崇拝の現代版で甚だ危険である。これへの最も有効な解毒剤が二大政党制の存在である。(政治的)自由は,有力な人々の間で意見が二分されている時にこそ存在できるからである。英国では自由党と労働党,米国では共和党と民主党が互いに争い,国民に批判と選択の自由が保障されている。
 私はルーズベルト大統領時代のアメリカで,私の会った人々の多くが,(世界大恐慌時)ニューディール政策を採る彼を危険な精神異常者だと評した。私はこの批判内容を妥当とは考えなかったが,一国の元首(注:日本でいえば「天皇」)をも批判できる制度だという点は,偶像崇拝がなく,権力悪の温床を作らず大変結構だと考えた。

ラッセル英単語・熟語1500
 プロシア帝国の蔵相から俸給を貰っていたドイツの哲学者へーゲルは「国家は神のよそおいである」と称した国家崇拝者であり,それは民主主義の普及した国では考えられない発想である。
(注:イラストは,ラッセルの The Good Citizen's Alphabet, 1953 から)

... Where democracy prevails, it is hardly possible to have that worship of the State as the Garment of God which Hegel sycophantically inculcated as he drew his pay from the Prussian Exchequer.