バートランド・ラッセルのポータルサイト

H.G.ウェルズとジョージ・ギッシング(拝啓バートランド・ラッセル様より)

* 原著:R.カスリルズ、B.フェインベルグ(編著)『拝啓バートランド・ラッセル様_市民との往復書簡集』

目次


ラッセル英単語・熟語1500
 ・・・。私は数年間、ある人物の生涯と著作について研究してきましたが、ふと、もしかしてあなたはその人物について、何か'個人的な'知識をお持ちかも知れないと、思いつきました。その人物とは、1903年に亡くなったヴィクトリア朝時代の小説家、ジョージ・ギッシングです。先生は、彼の著作で最も早い時期に出版された本のいずれかについて記憶されているでしょうか? それから、あなたが彼に会われたことがないようでしたら、彼を'個人的に'知っていた人、また、かつてあなたにギッシングのことについて言及したことのある人を -多分 H.G.ウェルズ もその一人と思いますが- ご存知でしょうか。

* ジョージ・ギッシング(George Robert Gissing, 1857年-1903年12月28日)は、イギリスの小説家。日本では随筆集『ヘンリー・ライクロフトの私記』などで有名。
* ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866年-1946年8月13日):イギリスの小説家、SF作家。

ラッセルからの返事(1958年2月11日付)

拝啓 マンスレイ様

 私はギッシングの小説はほとんど読んでおり当時大いに賞賛しましたが、彼に会ったことは一度もありません。あなたが興味を持たれる可能性があり、あなたのお役に立つことができる唯一の事実は、私が H.G.ウェルズから教えられたことです。ウェルズの小説『トーノ・バンゲイ』(Tono Bungay)の中に、あるいくらか悪党じみた資本家が、彼の人柄には会わないが、(世間に)非常に教訓を与えるような'死に方'をするところがあります。このことについて私はウェルズに尋ねると、ウェルズは、ちょっと奇妙な流れにはなるけれども、ギッシングの最後の病気と死について記録しておいた自分のノートを活用したんだ、と言いました。  敬具
一九五八年二月十一日 バートランド・ラッセル


'... In Well's novel Tono Bungay a somewhat rascally financier dies a very edifying death which seems out of character. I asked Wells about this and he told me that he had utilized his notes on Gissing's last illness and death - a somewhat odd proceeding.'(From: Dear Bertrand Russell; a selection of his correspondence with the general public, 1950 - 1968. Allen & Unwin, 1969.)