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(朝日新聞「天声人語」より)
索 引


『朝日新聞』2005.07.09 高橋郁男「ラッセル=アインシュタイン宣言」


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 ロンドンで、哲学者バートランド・ラッセルが核戦争回避を訴えるために記者会見を開いた。ちょうど50年前の7月9日のことである。アインシュタインや湯川秀樹らも署名したアピールは、米、英、ソ連などの首脳に送られ、「ラッセル・アインシュタイン宣言」として世界に広まった。
 厳しい冷戦下での宣言らしく、「核戦争による人類絶滅の危険」を警告している。民族や信条を超えた「人類のひとり」として訴えかける姿勢には、今もなお十分に説得力がある。
 「私たちがいまこの機会に発言しているのは、あれこれの国民や大陸や信条の一員としてではなく、その存続が疑問視されている人類、人という種の一員としてである」。ビキニ環礁での米国の水爆実験による第五福竜丸の被曝(ひばく)にも触れながら、将来の世界戦争では必ず核兵器が使われると危機感を述べる。
 「私たちは世界の諸政府に、彼らの目的が世界戦争によっては促進されないことを自覚し・・・彼らのあいだのあらゆる紛争問題の解決のための平和的な手段をみいだすよう勧告する」(『反核・軍縮宣言集』新時代社)。
 それから半世紀、今でも絶滅の危険は残っているが、核兵器は使われていない。しかし、紛争問題解決のための平和的な手段を見いだすことは難しく、戦争やテロは絶えなかった。
 卑劣な同時多発テロに襲われたロンドンから、市民たちの表情が伝わってくる。突然の凶行の恐怖に耐えながら、冷静さを保つようにつとめている印象を受ける。その姿に、「種の一員」としての共感を覚えた。